防災科学技術研究所(NIED、以下 防災科研)、東日本旅客鉄(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)は、防災科研の整備・運用する海底地震津波観測網から得られる海底地震計データを、鉄道事業者各社の地震防災対策へ活用することを目的とした、相互協力協定を10月30日付で締結したことを発表した。

活用する海底地震津波観測網

海域で発生する巨大地震は被害が甚大で、その対策は我が国の重要課題のひとつである。防災科研では、海域で発生する地震・津波を広域かつ多点でリアルタイムに観測するため、日本海溝沿いに日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を、南海トラフ巨大地震の想定震源域に地震・津波観測監視システム(DONET)を整備・運用している。

一方、JR東日本、JR東海、JR西日本では、地震を早期検知し緊急停止する地震防災システムをそれぞれ導入しており、これまで陸上に設置された地震計の情報が用いられてきた。防災科研と鉄道総合技術研究所(鉄道総研)では、海底地震観測網の情報により地震を早期検知し列車の制御に活用することを目的とした共同研究を実施し、活用手法や情報処理・配信方法について提案した。

日本海溝海底地震津波観測網(S-net)

防災科研とJR東日本およびJR東海は、 S-net海底地震計データの地震防災対策での活用に向けて、平成26年度に海底地震計データの試験的な配信に関する協力協定を締結し、防災科研と鉄道総研の共同研究の成果であるデータ伝送方式を活用して、平成28年度より房総沖の海域での加速度計データの試験配信を開始した。

今回、DONET海底地震計データを地震防災対策へ活用することを目的としたデータ配信に向けて、防災科研とJR東海およびJR西日本が相互協力協定を締結した。防災科研は平成30年度にかけてDONET加速計データを配信するシステムを構築し、同年中に試験配信を開始したのち、平成31年度よりDONETデータの新幹線の運行制御への活用を目指すという。

地震・津波観測監視システム(DONET)

今回締結した協定に基づき、防災科研と鉄道総研との共同研究成果であるデータ伝送方式を利用して、海底地震計データが鉄道事業者へ配信される。JR東日本の新幹線の一部区間では本年11月1日より地震発生時における新幹線制御への活用が始まり、JR東海、JR西日本の新幹線については、準備でき次第新幹線制御への活用を始める予定となっている。なお、これらの取組は、防災科研の海底地震津波観測網データが、鉄道事業者の防災対策に直接活用される初めての事例となる。

:新幹線の地震防災システム