日立製作所、パシフィックコンサルタンツ、計量計画研究所(IBS)の3社は10月30日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が管理法人となり、推進している内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム/大規模実証実験」における研究開発テーマの1つである、次世代都市交通に関する実証実験を受託したと発表した。

次世代都市交通の開発イメージ

内閣府は2014年度から、交通事故の低減や渋滞削減、自動走行技術を公共交通(大型バス)に適用したART(Advanced Rapid Transit、次世代都市交通システム)の実現などを目指し、自動走行システムの早期実用化と普及のため、研究開発事業「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム」を推進している。

また、同事業のうち大規模実証実験の管理法人であるNEDOは、内閣府・警察庁・総務省・経済産業省・国土交通省などと連携し、社会実装に向けた大規模実証実験を進めている。今回、3社が受託した実証実験では、高齢者や障害者を含む利用者にとって便利で使いやすい公共交通機関の実現を目指し、ARTの導入に向けた実証実験を行う。

2017年度から2018年度にかけては、ARTの所要時間の短縮に向けた高度化PTPS(Public Transportation Priority Systems:公共車両優先システム)や歩行者移動支援システムなどの実証実験を3社で連携して実施。

同実験では、日立はART情報センター機能の開発および実証実験と歩行者移動支援システムの有効性の検証、パシフィックコンサルタンツは高度化PTPSの利用によるART速達性向上の検証、IBSは混雑予測および混雑回避誘導手法の検討・実証実験をそれぞれ実施する。

2017年11月から実施する歩行者移動支援システムの有効性の検証では、高齢者・車いす使用者・視覚障害者などの交通制約者から協力を得て、「通れたマップ」作成に関する実証実験を行う。具体的にはスマートフォンなどの情報端末を携帯し、インストールしたデータ収集アプリを用いて、GNSS移動軌跡情報を収集する。

また、アクセスに問題がある場所やバリアフリー情報、移動時に気付いた点などを、データ収集アプリから投稿してもらう。そして、これらの情報を統合し、個々人の特徴に応じた通れたマップを作成。なお、2017年度に作成した通れたマップは、2018年度の個々人の特徴に応じたルート案内に関する実証実験において利用する。

「通れたマップ」作成に関する実証実験のイメージ

ART速達性向上の検証では、700MHz帯無線通信を用いた高度化PTPSを利用し、ARTの優先通行を行うことで、ARTの所要時間の短縮や遅延発生を防止するための実証実験を行う。さらに、公共交通機関の運行に関する多様な交通情報を収集・管理するART情報センターと連携することで、特に遅れている車両や混雑している車両を優先的に通行させるための仕組みの実現も目指す。

高度化PTPSによるART速達性向上の検証イメージ

ART情報センターは、多様な交通関連情報を収集・管理・提供することで、ART関連情報を利用したサービスやARTの有機的かつ柔軟な連携を実現する基盤として位置づける。交通関連データの収集と利用が一体となったオープンプラットフォームの提供を目指す。

ART情報センターのイメージ