デルとEMCジャパンは10月26日、都内で「Dell EMC Forum 2017」を開催した。同イベントにおいて、米Dell EMC サービスおよびIT担当プレジデントのハワード・エライアス氏が「デジタルな未来を実現するために - Realize your digital future」と題し、基調講演を行ったので、その模様をレポートする。
冒頭、エライアス氏は「人間の集中力の平均持続時間は8秒であり、毎日在宅勤務を希望する社員の割合が80%、過去2年間に生成されたデータの占める割合が90%、毎日100万件のデータ侵害がある。そのような状況を踏まえ、10月中旬にデルテクノロジーズにおけるIoTの方針について発表した。方針とは、IoTの事業部を新設し、今後3年間で10億ドルの投資を行い、新製品を開発していくものだ」と説明した。
同氏はIoTの方針について「われわれではエッジからコア、クラウドまでカバーし、次世代ITにおける必要不可欠なインフラストラクチャを提供する企業になることを目標としている。アプリケーションがビジネスバリューをもたらし、そのアプリケーションはインフラストラクチャの上で稼働し、ユーザーがアプリケーションに接続するためのセキュリティは常に担保しなければならないと」と、強調する。
ITエコシステム全体をカバーする4つの柱とは
エッジ、コア、クラウドをカバーするため、インフラストラクチャはDell EMCとVMware、アプリケーションはPivotal、クラウドはVirtustream、セキュリティはRSAとSecureWorksが担う。
そして、これらITエコシステム全体をカバーするために「デジタルトランスフォーメーション」「ITトランスフォーメーション」「ワークフォーストランスフォーメーション」「セキュリティトランスフォーメーション」の4つの柱を据えている。
デジタルトランスフォーメーションでは、新しいアプリケーションとスマートデバイスによるカスタマーエンゲージメントの促進、データ分析で新たなインサイトを促進、アジャイル開発と継続的デリバリーで改善を加速することを繰り返し、変革を導かなければならないという。
ITトランスフォーメーションとは、データセンターのトランスフォーメーションを指し、この実現には最新鋭化と自動化、変革が必要だとしている。最新鋭化では、最適な組み合わせのインフラストラクチャと最新のアーキテクチャを採用し、複雑なサイロを排除することで、最も重要な資産であるデータを保護。自動化に関しては、運用の簡素化と自動化を実現するために、オーケストレーションかつAPI駆動型であることが望まれる。変革については人材、プロセス、俊敏性を新しい方法で変革し、ビジネスをパワーアップしていくことが重要だと位置づけている。
ワークフォーストランスフォーメーションでは、時間外労働の削減や在宅勤務の奨励、デバイスのテクノロジー向上などに取り組まなければならないほか、近年では各業界において人材確保が必須となっており、最新のテクノロジーや生産性が高く、コラボレーション・コミュニケーションが活性化が求められている。そのため、エンドユーザーが利用するデバイスのコストを低減するのではなく、デバイスを効率的に管理することでチームメンバーの生産性の向上を可能にするべきだと指摘している。
セキュリティトランスフォーメーションにおいては、多くのデバイスが攻撃にさらされている昨今、デバイスをセキュアなものにしなければならないところ、これまで攻撃を防止することに大半の予算をつぎ込んでいたが、すべての攻撃を防止することは難しいため、攻撃が起こり得ると仮定するべきだという。
エライアス氏は「デルテクノロジーズでは、これら4つの柱に対し、製品の提供を可能としており、変革を進めることで大きなメリットが得られる。プロジェクトを従来比3倍のスピードで進行させることを可能とし、最大で33%の投資削減の効果が見込め、これまでの2倍の売り上げを確保できる」と、述べた。
IoTに取り組むためのカギは「分散コンピューティングアーキテクチャ」
基調講演でエライアス氏は、ITエコシステム全体をカバーする4つの柱について説明していたが、具体的にはどのようなことなのだろうか。その後、開かれた記者会見において同氏が説明した。
ITエコシステム全体をカバーするためには、分散コンピューティングアーキテクチャがカギとなり、これはエッジからコア、クラウドにおいて互いに連携したエコシステムに統合するという。
現在、完全なIoTソリューションをまとめて1社で実現できるベンダーを望む声が高まっているが、デルテクノロジーズのIoTに対するアプローチは、市場をリードするテクノロジーとサービス、そして慎重に選定したパートナーで構成するエコシステムを基盤としている。
新設したIoT事業部は、VMware CTOであるレイ・オファレル氏が率い、Dell EMCとVMware、Pivotal、Virtustream、RSA、SecureWorksが有する能力を合わせて、エッジポイントデバイスから分散コア、クラウドにわたり、製品を提供する。
すでに、デルテクノロジーズはEdge Gatewayを提供しており、同製品はVMware Pulse IoT Control Centerによりセキュリティを確保しつつ、デバイスの管理をすることができるという。
また、Dell EMCの「PowerEdge C シリーズ」サーバも、分散型コアの一部としてバッチトレーニングおよび機械学習用に強化されているほか、「Dell EMC Isilon」および「Elastic Cloud Storage」は膨大な量のデータのためのファイル、およびオブジェクトストレージを提供するとともに「Hadoop Distributed File System(HDFS)」による分析も可能としている。
さらに「Pivotal Cloud Foundry(PCF)」「Pivotal Container Service(PKS)」は、新しいクラウドベースのアナリティクスアプリケーションの開発に適したプラットフォームとなる。
Virtustreamの「PCF Service」は、運用管理を提供することで「Virtustream Enterprise Cloud」のミッションクリティカルなクラウド環境のワークロードの展開と稼働を簡素化すると同時にオフプレミスのクラウドオブジェクトストレージ「Virtustream Storage Cloud」利用することができる。広範なポートフォリオにより、多様な業界における顧客ニーズに対応する考えだ。
新製品の開発の進捗
一方、新製品の開発としては「Project Nautilus」「Project Fire」「Project IRIS」「Worldwide Herd」などを進めている。Project Nautilusは、IoTゲートウェイから送られるデータのリアルタイムの取り込みとクエリを実現するソフトウェア。取り込んだデータは、高度な深層分析用にファイルまたはオブジェクトストレージにアーカイブされる。
Project Fireは、IoT管理ソリューションであるVMware Pulseファミリのハイパーコンバージドのプラットフォームとなり、簡素化した管理環境、ローカルコンピューティング、ストレージ、またリアルタイムアナリティクスなどのIoTアプリケーションを提供。導入企業は、IoTのユースケースを短時間でロールアウトできるとともに、エッジからコア、クラウドに至るまでインフラストラクチャソフトウェアを実装を可能としている。
Project IRISは「RSA Security Analytics」の機能を拡張することで、脅威に対する可視性を提供し、エッジまでの完全なモニタリングを実現するとしている。Worldwide Herdは地理的に分散されているデータに対して分析を実行するという。
そのほか、社外のイノベーションエコシステムとの価値あるつながりを提供することで、IoT、AI(人工知能)、マシンラーニングなどのテクノロジーとソリューションの開発と導入を効果的に加速するため、スタートアップ企業への投資を実施。
エライアス氏は「IoTは複雑であり、大量のデータを分析して結果を出す必要があり、テクノロジーのインテグレーションが難しいものとなる。また、データを既存の製品・サービスに用いるだけでなく、新しい製品・サービスに活用するため収益化も難しい。そして、機械学習や深層学習などの分析に携わる人材不足はグローバルで大きな問題となっており、ツールを提供することで分析を可能にしていく必要がある。さらに、多くのエンドポイントが攻撃の標的となることから、エンドツーエンドのセキュリティがアーキテクチャに搭載されていることが望ましいことに加え、企業全体が足並みをそろえる必要もある。そのため、サービスや製品の構築をIoTを活用して考え直す必要があり、デルテクノロジーズがそれを支援する」と、説明していた。