九州大学(九大)は、ロボットや人形の見た目が生み出す不気味さの認知的メカニズムを明らかにしたと発表した。

未知への不安の強さと分類困難な対象の不気味さの関係(出所:九州大学Webサイト)

同成果は、 九州大学基幹教育院の佐々木恭志郎 学術研究者、アドミッションセンターの井隼経子 准教授、基幹教育院の山田祐樹准教授らの研究グループによるもの。詳細はスイスの科学雑誌「Frontiers in Psychology」オンライン版に掲載された。

ロボットや人形の見た目について「不気味の谷」と呼ばれる現象がある。ロボットや人形の見た目は、人間に似ていくにつれてだんだんと好ましく思われるというものだ。しかし、類似度があるレベルに達した途端、強い不気味さが喚起されるようになる。これまで、人間なのか人形なのかを分類できないこと自体が不気味さを生み出すと考えられてきたが、分類できないことがなぜ不気味さを引き起こすのかについては手がかりが乏しい状況だった。

今回の研究では、分類困難な対象の不気味さに、人が抱く「未知への不安」が寄与していることを実証した。実験では、参加者に13種類の人間と人形の合成写真について、「どれくらい不気味に感じるか」を尋ねた。同時に、未知への不安を抱きやすい性格かどうかについても測定した。その結果、未知への不安を抱きやすい人ほど、分類困難な対象を不気味と感じやすいことが明らかになった。

この結果は、何が不気味なのかを調べようとする従来の研究と異なり、「誰が不気味を感じるのか」を検討したことで明らかになった。これにより、不気味の谷だけでなく食わず嫌いやゼノフォビア(外国人恐怖症)といった未知なる対象を回避しようとして生じるさまざまな現象の理解が一気に前進する可能性が高まったと研究グループは説明している。