東京工科大学は10月24日、化粧品原料に使われる「ブタプラセンタエキス」の活性メカニズムの解明につながる成分の存在を発見したと発表した。

同成果は、東京工科大学応用生物学部 今村亨教授、修士課程の伊藤航平氏、山田竜二氏、学部生の松本展希氏らの研究グループによるもので、10月2日付の米国科学誌「Journal of Cosmetic Dermatology」に掲載された。

プラセンタ(胎盤)エキスは、化粧品やサプリメント、医薬品などに広く利用されているが、その活性発揮のメカニズムについては不明な点が多くあった。とくに化粧品原料には、主にブタから調製したものが使われているが、製造工程でタンパク質の酵素分解や加熱という過酷な処理を施されており、細胞の増殖分化や機能を制御する活性をもったシグナル分子が含まれていることを示した例はこれまでになかった。

今回、同研究グループは、プラセンタエキスの有効性を明らかにするため、シグナル分子の一群である線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーの活性に着目。FGFファミリーに対する主要な受容体の活性化を解析できる細胞を複数種類作成し、これらに対してブタプラセンタエキス(PPE)を加えるという実験を行った。

この結果、増殖反応を通じて5種類(FGFR1c、FGFR2c、FGFR2b、FGFR3c、FGFR4)のFGF受容体について、活性化を示すことが明らかになった。また、プラセンタエキスには「グリコサミノグリカン」という糖鎖が含まれており、化粧品原料の製造工程においてFGF活性を保護していることも示唆されている。

組換えタンパク質として生産されている天然型FGF医薬品は、皮膚潰瘍や粘膜炎の治療、再生医療や美容皮膚科などの分野でその有効性が実証されているが、今回の研究により、化粧品原料としてのプラセンタエキスの有効性も、その一部はFGF活性によるものであることが示唆されたといえる。

FGF受容体がプラセンタエキスで活性化される様子 (出所:東京工科大学Webサイト)