大阪大学は、同大大学院基礎工学研究科の若林裕助准教授らの研究グループが、東京大学大学院新領域創成科学研究科の岡田真人教授、同大学院総合文化研究科の中西(大野)義典助教と共同で、情報科学に基づく表面構造解析ソフトウェアを開発したことを発表した。これにより、物質の表面付近の原子配置を非破壊・非接触で0.02Åの高分解能で解析できるようになる。この成果は、国際結晶学連合の論文誌「Journal of Applied Crystallography」12月号に掲載された。
結晶を形作る原子の並び方を知るためには、通常は結晶にX線を照射して回折されたX線強度を測定する「X線結晶構造解析」が用いられる。この手法は、単結晶が繰り返し構造を持っていることを利用したデータ解析により実現され、これにより様々な新物質の構造が明らかにされるとともに、多くの物質開発の基礎となった。表面や界面は様々な特異な現象が生じるが、その場所での原子配置を通常のX線結晶構造解析の手法で得られないことが、界面構造の制御を困難にしている。
大型加速器により得られる放射光X線を利用することで、物質の表面や界面の構造を反映した情報が得られる「表面X線回折法」は、X線結晶構造解析と同じ原理に基づくものだが、簡便な解析ソフトウェアがないために表面X線回折法を用いた表面X線構造解析はあまり普及していない。
そこで研究グループは、情報科学に基づく表面構造解析ソフトウェアを様々な性質を示す遷移金属酸化物の界面を対象として開発した。これにより、データの精度に由来する解析結果の信頼度を評価すること、及び安定した解析結果を得ることが可能となった。同ソフトウェアを活用することで、酸化物デバイスの実現に向けた素材開発の大幅な効率化が期待される。