NEDOは、大阪大学が青色半導体レーザの高輝度化により純銅を積層造形できる3Dプリンタを開発したことを発表した。同成果により、これまでレーザを用いては溶融が困難であった高電気伝導性と高熱伝導性を有する純銅の積層造形が可能となり、航空・宇宙・電気自動車などの産業で必要な加工部品への応用が期待できる。
3Dプリンタを用いた積層造形技術は、他の加工法では作れない複雑な形状の造形や、少量多品種生産などを実現することから、さまざまな分野における実用化が期待されている。特に、純銅素材の製造・加工については、航空・宇宙・電気自動車などの多くの産業から期待されている。しかし、近赤外線レーザを用いた従来の3Dプリンタでは、純銅素材の溶融などに課題があった。
今回、NEDOプロジェクトにおいて、大阪大学接合科学研究所の塚本雅裕 教授らの研究グループは島津製作所と共同で、日亜化学工業と村谷機械製作所の協力を受け、青色半導体レーザの高輝度化により純銅を積層造形できる3Dプリンタを開発した。
まず、純銅粉末を溶融させるために必要なパワー密度を得ることができる出力100Wの高輝度青色半導体レーザを開発。波長450nmの青色半導体レーザ光を、コア径が100μmの光ファイバーから出力することで、直径100μmのスポットに容易に集光することが可能となった。また、出力100W時の直径100μmのスポットにおけるレーザ光のパワー密度は、1.3W/cm2×106W/cm2となり、純銅粉末を溶融させるのに十分なパワー密度を実現した。
そして、この高輝度青色半導体レーザの集光ヘッドを配置したシステムを筐体内に収めたSLM(Selective Laser Melting)方式3Dプリンタを開発した。この3Dプリンタにより、純銅の積層造形に成功した。この3Dプリンタは、ガルバノミラーを使用せず、集光ヘッドを直接稼働させる構造にすることで、低コスト化を実現しているという。
同成果により、従来の近赤外線レーザを用いた3Dプリンタでは困難であった純銅をはじめとする材料の積層造形など、航空・宇宙・電気自動車などの産業に必要な加工部品への応用が期待される。また、SLM方式3Dプリンタは、LMD(Laser Metal Deposition)方式3Dプリンタよりも造形精度が高いので、複雑な構造の流路を持った純銅ヒートシンクなどへの応用も期待されるとしている。
なお、同技術については、2017年10月22日から26日まで米国アトランタで開催される国際会議「The International Congress on Applications of Lasers & Electro-Optics(ICALEO)」、および2018年1月30日から2月1日まで米国サンフランシスコのモスコーニセンターで開催される国際展示会「Photonics West 2018」での公開を予定しているとのことだ。