日立製作所は、生産ラインのデータや熟練者の作業履歴など、AIを活用して解析し、自動的に最適な生産計画を立案する「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」を提供開始した。

サービス概要図

同サービスは、鉄道の運行管理などで実績のある数理最適化技術に機械学習を用いたAIを融合し、同社独自の制約プログラミング「Hitachi AI Technology/MLCP(Machine Learning Constraint Programming)」を適用して、最適解の高速抽出のほか、熟練者による生産計画を再現可能とするもの。近年、製造業ではAIの活用などによる業務の自動化が期待されており、製造現場における生産計画の立案においても熟練者技術のデジタル化が求められているが、すべての条件を事前に網羅することには限界があり、熟練者の効率性と品質を両立した生産計画を再現することは非常に困難とされてきた。

同社は、鉄道のダイヤ編成など運行管理で培われた数理最適化技術を応用し、製造現場において最適な生産計画を自動生成するための制約プログラミングを研究している。同サービスでは、設備や納期、コストといった複雑な制約条件に加え、膨大な熟練者の計画履歴から機械学習を使って熟練者独自の計画パターンを抽出・組み合わせて解析し、多品種・多工程の製品をどの順番で生産すべきか、最適な生産計画を導き出す。また、熟練者は、制約条件を満たせない場合でも、条件を緩和して柔軟に計画の立案を行うなど、経験に基づくノウハウで高効率な計画を立案しており、これらのノウハウをデジタル化することで、急な需要変動や納期の変更などにも、柔軟な計画立案を支援することができる。さらに、システムによる自動立案の結果を熟練者が評価して継続的に学習することで、計画内容の品質向上を図るという。これにより、需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替えが可能となるなど、計画や見直しに要する負荷を大幅に軽減するほか、生産計画の立案に関する技能継承を支援するということだ。

また、同サービスでは、従来にない新しい価値や発想を生み出す独自のデザインアプローチの手法やプロセスを活用し、より踏み込んだシステム設計が行われる。専門チームによる熟練者を含めた現場への調査やインタビューを徹底的に行い、計画立案に関する一連の業務を深く理解するとともに、同社のデータ・アナリティクス・マイスターの解析する製造現場の様々なデータをかけ合わせ、熟練者のノウハウをシステムへ組み込むという。

なお、同サービスは、新日鉄住金との共同実証に適用されており、熟練者の生産計画の一部について再現性が確認されたため、2018年2月より本格的な実証環境が整備される予定となっている。また今後は、日々の熟練者の生産計画と同サービスにより算出した生産計画を比較・検証する段階に移行するということだ。