NTTは10月23日、同社が研究開発した秘密分散技術がISO(国際標準化機構)が発行した秘密分散技術では初の国際標準において、標準技術として採択されたと発表した。秘密分散技術の国際標準が確立したことにより、利用者は国際機関が認める安心・安全な秘密分散方式を選択可能になったとしている。

秘密分散技術は、データに特殊な符号化を施して複数の断片に分割することで、個々の断片からは情報が漏れず、幾つかの断片が消失しても復元を可能としている。同技術では、元データの秘匿強度を示す「安全性」や、複数に分かれた断片ファイルの合計データ量が元ファイルのデータ量に比べて、どの程度大きいかを示す「容量効率」、さらに保存・復元以外に分析も行う場合に必要となる「拡張性」といった評価項目がある。

2つの断片から復元できるような秘密分散の例

しかし、秘密分散技術には多くの実現手段(方式)が存在し、必ずしも学術的に安全と認められないような方式や、保存する総容量が元データに比べ、大きくなってしまう方式があり、利用者は適切な秘密分散方式の選択が難しい状態だったという。

こうした問題を解決するため、同社はISOでの秘密分散技術の標準化においてエディターとして規格作成を主導しており、その成果として今回ISOが秘密分散技術の国際標準を発行した。

同社の研究開発では独自の秘密分散方式1つを含む3方式を使用しており、すべてが標準として採択された。これにより、同社が提供する秘密分散技術を基にしたソフトウェアは、すべてISO規格準拠として利用が可能になったという。

今回のISO標準では、5つの秘密分散方式を採択しており、それぞれ安全性・容量効率・拡張性が異なる。5つの方式のうち1方式は同社の独自方式であり、標準に採録した秘密分散方式の中で最も容量効率に優れるとしている。

これを用いることにより、安全なデータの分散保存を可能とするNTTセキュアプラットフォーム研究所が開発した秘密分散エンジン「trust-ss」や、オープンソースの分散オブジェクトストレージ「OpenStack Swift」の堅牢性補償機能に対応する高速秘密分散エンジン「SHSS」は、高い容量効率を実現しているという。

残りの4方式は従来から知られている方式であり、同社の秘密計算技術である「算師」は、これらの方式を複数組み合わせて使用している。

今後、高速かつ容量効率の良い秘密分散方式を用いた研究開発を通じ、安心・安全なストレージサービスの事業展開や、OpenStack SwiftをはじめとしたOSSコミュニティへの貢献していく。また、秘密分散技術を用いたデータ保護と分析を両立できる秘密計算技術の研究開発を通じて、安心・安全なデータ流通社会を構築していく方針だ。