北海道大学(北大)は、山火事で生成され、土壌に混入した炭が、枯死した状態で土壌に残された根の分解を促進することを明らかにした。同成果は、その発生時の燃焼によるだけでなく、炭を作り出すことで発生後にも長期的に森林からのCO2の放出速度を高めるという新たなメカニズムの存在を示している。
同成果は、ロシア科学アカデミー極東支部のBryanin Semyon氏、Abramova Evgeniya氏、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーションの小林真 助教らによるもの。詳細は、土壌生物学に関する国際誌「Soil Biology and Biochemistry」に掲載された。
極東ロシアなどの森林では、人為的な要因により山火事が頻発しており、北にある森林には、大量の炭素が有機物として土壌中に蓄積している。したがって、森林土壌中の有機物に含まれる炭素に山火事がおよぼす影響を理解することは、全体のCO2濃度へ及ぼす山火事の影響を理解する上で不可欠となる。
同研究では、火事後も土壌中に残り炭素の貯留庫となっている根(細根)を、山火事でできたさまざまな量の炭と一緒に森林土壌中に埋め、細根の重量の減少を2年間追跡した。
研究の結果、埋設後しばらくは炭が根の分解に及ぼす影響は見られなかったが、2年が経過するころには、細根が炭と一緒に埋められた場所(野外で観察される平均の2倍量の炭と埋められた場合)で、炭がない場所や平均的な量の炭と一緒に埋められた場所に比べて、細根の分解は顕著に促進されていることが分かった。これは、山火事跡地で局所的に多くの炭が存在する場所では、火事後に燃え残った根の分解にともなうCO2の放出を高い状態で維持することを示す。
同研究では、山火事が森林からCO2を放出させる新たなメカニズムを発見した。研究グループは同成果に関して、今後、気候変動などによって山火事の頻度が変化した際に、大気中のCO2濃度がどのように変化するのかを予測することに役立つことが期待できると説明している。