デルとEMCジャパンは10月20日、都内で記者会見を開催し、ひとり情シスに悩む中堅企業(従業員100人以上、1000人未満)のビジネスを本格的に支援するために、ひとり情シスの実態を調査・分析・結果を基に新たなソリューションプログラムの提供を開始した。

ひとり情シスを支援するプラグラム

同社では昨年末から3回にわたり、実施してきた中堅企業を対象に(1)IT 投資動向調査(2016年12月26日~2017年1月20日)、(2)バックアップ関連調査(2017年4月26日~5月19日)、(3)仮想化動向調査(2017年8月2日~8月25日)について、特に予算や人的リソースに悩む、ひとり情シス企業を対象として分析を行い、IT課題を洗い出した。

デル インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 法人営業本部 広域営業部 セールスエンジニアリングの木村佳博氏は、調査結果を踏まえ「ひとり情シス企業の特徴としては、従業員数の増員や突発的な予算決定する傾向が強く、半数以上がサーバ仮想化を活用していない。また、システム・データ復旧に自信がなく、海外展開していることなどが挙げられる」と分析。

デル インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 法人営業本部 広域営業部 セールスエンジニアリングの木村佳博氏

同社は、ひとり情シスはIT運用負荷の削減や管理の自動化・シンプル化を支援する具体的な打ち手だけでなく、業務過多による外部コミュニティへの参加が難しいひとり情シスの担当者向けの情報交換コミュニティや、IT技術動向の理解から評価・目利きをできるように技術・スキルを習得するプログラムなど、ノウハウの共有や向上を支援するアカデミックなプログラムが必要であるとの認識を示す。

これに対し、ひとり情シスコミュニティサイトの開設、ひとり情シス大学の開校、ひとり情シスを可視化する可視/定額型メニューの提供、ひとり情シス向け終活ソリューションを提供する。

ひとり情シスコミュニティサイトは、Dell EMCのユーザー同士の情報交換コミュニティとしてSNS専門ページを開設。これにより、日常のIT運用で起こり得る問題を質問するQAサイトを運用開始し、デルユーザーのみコミュニティサイトへ無料でユーザ登録を可能としている。

ひとり情シス コミュニティサイトのイメージ

ひとり情シス大学は、Dell EMCのユーザー向けに、ひとり情シスを支援する特設ポータルサイトを開設し、ビデオ講座の提供やパソコン、ネットワーク、サーバ、セキュリティ、クラウドなど技術スキルに関する講座、コミュニケーションに関する講座、ITガバナンスに関する講座など、全150講座(初級編:18科目90講座、応用編:12科目60講座)で構成。

初級編は2018年4月から半年間かけて提供開始を予定し、応用編は企業内コンサルティングなどから提供するほか、各科目完了後に習熟・修了試験を行う。コミュニティサイトと同様にデルユーザーは無料で登録できるという。

ひとり情シス大学のカリキュラムマップ

可視・定額型サポートメニューは、情シス業務のブラックボックス化や、価格の適正値が判断できない、必要なサービスが分からない、といった課題に対応する。ひとり情シスの業務を可視化し、業務の定額メニューとして日常業務、突発的業務、導入・改修の3つのメニューを提供を予定しており、10月26日に開催予定の「Tokyo Dell EMC Forum 2017」において価格などの詳細を公表する予定だ。

サポートメニュー一覧

終活ソリューションは、次の担当者への引継ぎなど社内ITを透過的に情報管理することを目的としており、ITの見える化とIT環境の復旧のソリューションを提供する。ITの見える化ではシステム構成図の陳腐化脱却を図るためVMware vRealizeを活用。さらに、復旧ではサイロ化したネットワーク個別設定の復旧対応として、ネットワークを自動復旧させるVMware NSXを使用する。これより、システム関連ドキュメントの常時最新化と、システムおよびデータ復旧の仕組化を図る。

終活ソリューションの概要

なお、可視・定型型サポートメニューと終活ソリューションは有償となる。

アンケート結果から読み解く、ひとり情シスの実態とは

アンケートの調査結果では、従業員の増員計画は、ひとり情シス企業が一般企業に比べて多い傾向(ひとり情シス企業41%、一般企業33%)となり、IT担当者の負荷の高止まりが避けられない状況となっている。また、海外展開の取り組み・計画は、ひとり情シス企業が一般企業に比べて低い傾向にあるものの、41%の企業が対応(一般企業59%が対応中)を進めており、IT資産の棚卸が必須となっている。

さらに、IT予算の決定サイクルは、ひとり情シス企業が一般企業に比べて突発的に決定するケース(ひとり情シス企業46%、一般企業22%)が多く、中長期的なIT戦略の策定が難しい状況だという。加えて、バックアップは、ひとり情シス企業の54.3%がシステム・データ復旧に自信がないと回答し、最新のバックアップ技術の情報収集・導入のための時間確保ができていない状況だと推測。

そのほか、サーバ仮想化は、ひとり情シス企業の55.5%が活用していないと回答(一般企業でも27.1%の企業が未活用)したほか、保有しているサーバすべてを仮想化している企業は、わずか2%にとどまっている状況(一般企業でも3%にとどまる)で、仮想化によるメリットをほとんど享受できていないと指摘している。

デル 執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏は「過去半年のわれわれの施策としては、1月に全国17都市で中堅企業向けセミナーの開催し、2月には中堅企業向けIT投資動向調査を実施、3月にはクイックウィンソリューションを発表しており、4月にはインサイドセールスの大幅増員に踏み切り、1600人の応募うち、43人が入社済みだ。また、5月にはバックアップ環境の追跡調査を実施し、6月にひとり情シスを支えるクラウドサービスを発表している。さらに、これまで蓄積した知見をベースに、ひとり情シスを取り巻く状況など『ひとり情シス』読本を作成した。新ソリューションプログラムは、今後ひとり情シスを担う人や経営企画部門などIT以外の職種から異動した人をはじめ、ITリテラシーが低く、困っている人を対象としている」と、述べた。

デル 執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏