Appierは10月18日、プレス向けに「Appierが考えるAI(人工知能)の将来と企業におけるAI活用」というタイトルの下、セミナーを開催した。同社は、AIを搭載した予測分析プラットフォーム「Aixon」、プログラマティックプラットフォーム「CrossX」を提供する。同セミナーの話をもとに、「AIの未来とは?」「企業がAIをビジネスに生かすために何をすべきか?」を明らかにしたい。
セミナーでは、同社のチーフ・データサイエンティストを務めるシュアン・テン・リン氏が説明を行った。
競争力が上昇中のAI
リン氏は、日本市場におけるAIの動向として、安倍首相が日本の成長戦略の1つとして指示していること、野村総研がAI市場が2030年には87兆円まで成長すると予測していることを紹介した。
続いて、技術的な側面からAIに関する説明が行われた。AIとは、「コンピュータにより、人間らしく、かつ、合理的な思考と行動を実現するもの」であり、リン氏は「人工知能においては、どの程度人間らしく、合理的に目標を設定することが重要」と語った。
リン氏は、AIの中でも注目を集めている技術として、機械学習、ニューラルネットワーク、深層学習を挙げ、次のようにそれぞれの特徴を示した。
機械学習はデータを材料として学習し、目標を設定し、ゴールを達成する技術
ニューラルネットワークは人間の脳をシミュレートする技術
深層学習は、機械学習の一部であり、また、ニューラルネットワークの一部である技術
現在、機械学習がAIの主流となっており、深層学習は従来の機械学習と比べて、データが増えてもパフォーマンスを上げることが可能だという。リン氏は、AIが成功している要因として、「ラベル化されたデータが豊富にあること」「コンピュータ処理とストレージにかかるコストの低下」「ハードウェアの向上を最大に活用できるアルゴリズム」「コミュニティの活性化」を挙げた。
リン氏は、同社が考えるAIについて「2011年から2015年までは『有望』、2016年から2020年は「競争力上昇」、2020年は「必要不可欠」」と語った。2017年におけるAIは「競争力上昇」の状況にあるわけだが、競争力は「人間に勝る競争力」と「市場における競争力」の2つの意味があるそうだ。
AIは人を超えるか?
昨今、人間の仕事がAIに奪われしまうのかという議論が行われているが、リン氏は「AIは、タスクにおいては、人を超える」と述べた。その例として、近く認識を挙げた。
AIは現在、一定のカテゴリーのモノの認知において超人的だが、画像の中の構成要素や映画のストーリーの理解、映像の認知や意図の推論においてはまだ超人的とは言えないそうだ。
さらに、リン氏はAIが人間に勝っている点を2つ挙げた。1つは、AIが人間よりも長時間にわたり働くことができることだ。人間は不眠不休で働くことはできないが、AIはシステムが稼働する限り働くことが可能だ。
もう1つは、AIに身体的な制約がないことだ。当然ながら、一人の人間は同時に2つの場所に存在することはできない。しかし、AIはセンサーなどを活用し、広範囲で活動することが可能だ。
企業がAIを活用するためにすべきことは?
さて、企業にとって重要なのは、AIがどのような形で自社のビジネスにメリットをもたらすのかということだろう。
リン氏は、マーケティング、財務・経理、セールスなど、データを活用する典型的な業務において、AIはすぐに活用できると述べた。具体的には、目的に即した形で、学習、分析、発見、予測、実行、最適化、改良といったことを実現する。
リン氏は、企業がAIを活用するにあたって必要なこととして、「明確かつ設定可能な目標が立てられているか」「十分なデータがあるか」など、戦略の検証を挙げた。
AI活用における課題の特定、目標の設定が済んだら、AIを活用すべく「データサイエンティストの雇用」もしくは「AI as a Serviceの導入」を行う。リン氏は「課題を見極め、ゴールを設定することが重要。そして、シンプルな課題から取り組むべき」と語った。
AppierはAI as a Serviceとして、AIを搭載したデータインテリジェンスプラットフォーム「AIXON(アイソン)」を提供している。リン氏は同社のソリューションの強みとして、「データ収集・保存が容易」「モデル構築と検証の自動化」「継続的なデータインサイトとデータ予測が可能」の3点を挙げた。
今年以上に来年もAIの注目度が高まっていくだろうが、2018年は「ユーザーインタフェース」「中核技術」「ビジネス・コンサルティング」の分野で伸びていくことが予測されるという。