アメリカ航空宇宙局(NASA)は、大気の状態を計算する3次元モデルを使用して、太陽系外の居住適性を計算し、その可能性を割り出す方法を発見したと発表した。
同成果は、東京工業大学地球生命研究所の藤井友香 准教授らによるもの。詳細は米国の学術誌「Astrophysical Journal」に掲載された。
生命の生活には、水が必要だ。星の表面に数十億年の間、液体の水が存在すれば、生命の居住が可能だと考えられている。系外惑星が親星からあまりにも遠すぎると、寒すぎて海が凍りつき、近すぎると、星からの光が強くなりすぎて、海洋が最終的に蒸発してしまう。
この蒸発は、水蒸気が成層圏と呼ばれる上部大気中の層に上がり、星からの紫外光によって元素の成分(水素と酸素)に分解されるときに起こる。極端に軽い水素原子は、空間に逃げることができる。このように海洋を喪失する過程にある惑星は、その湿潤な成層圏のため温室状態に入ったと言われている。
従来、大気条件のシミュレーションには、垂直方向に沿った1次元のモデルを用いていた。しかし、1次元のモデルでは、大気や大気の循環における特徴のすべてを計算することができなかった。
今回の研究では、3次元で大気の状態を計算するモデルを使用し、星が放出する放射線の種類と、外惑星が温室状態になる際の、大気循環に及ぼす影響が、重要な役割を果たしていることを発見した。
研究グループは、星の近赤外線(NIR)は、温室状態に入るために必要な熱を与えることが可能だとした。 NIRは、人間の目には見えない光の1種だ。水は空気中の蒸気として、雲中の水滴または氷晶はNIR光を強く吸収し、空気を暖める。空気が暖まると、上昇し、水を成層圏に運び、湿った温室を作る。
新しいモデルは、低質量の星がNIR波長で大部分の光を放射するので、湿った温室の状態は、地球の熱帯地方に匹敵するかまたはそれよりやや温暖な状態でさえも生じることを実証した。彼らの星に近い外惑星では、NIR駆動プロセスが成層圏の水分を徐々に増加させることが分かった。このことから、古いモデルの予測とは対照的に、親星に近い外惑星は居住可能な可能性があるとしている。
今回の成果を受けて研究グループは、低質量の星が銀河で一般的であるため、これは居住可能な世界を探索する天文学者にとって重要な観測である。また、それらの中に居住可能な世界が見いだされる可能性が高くなるとコメントしている。