Texas Instruments(TI)は10月19日、自動車分野に向けた自社の取り組みについての説明会を開催。同社オートモーティブ・システムズ・ディレクタのHeinz-Peter Beckemeyer氏が、未来の車載システムの実現に向けた同社のソリューションの紹介を行った。
TIオートモーティブ・システムズ・ディレクタのHeinz-Peter Beckemeyer(ハインツ・ピーター・ベッケンマイヤー)氏 |
TIの事業における自動車(車載)関連の売り上げは全事業の18%ほど(2016年度)。2013年度は12%ほどであったので、事業全体の拡大を踏まえると、急速に事業を拡大していることがうかがえる。また、そうした市場の拡大に併せる形で、2016年度に発売された車載向けの新製品の数も2014年度比で2倍に増加。今や、同社の研究開発費(R&D)の22%を組み込み、アナログ技術、ディスプレイ技術なども含め、トータルソリューションという形で車載向けに振り分けている。
Beckemeyer氏は、「車載は今や、ファクトリオートメーション(FA)と並んで、TIを支える2大市場であり、今後の成長の鍵となる分野。世界の自動車には2017年で1台あたり324ドルの半導体製品が搭載されていると言われているが、これが2021年には361ドルへと増加することが見込まれている。そうした意味では、今後も自社が有利になるだけの研究開発を推進していくつもりだ」と述べており、今後、グローバルで出荷台数の伸びも見込まれる自動車産業に対して、抱える課題の解決に向けたソリューションを提供するべく取り組みを進めていく姿勢を見せる。
「TIの車載分野の強みは、30年以上にわたる同分野への取り組みで培われた信頼性のほか、マイコン、アナログ半導体、ディスプレイなど幅広い製品をソリューションとして提供することで得られる柔軟性はもとより、エントリクラスの自動車から、ラグジュアリクラスまで、それぞれのクラスで抱える課題の解を提供できる点にある」(同)ということで、現在は以下の4つのトレンドに対して注力しているとする。
- ADAS
- ボディ・エレクトロニクス/ライティング
- インフォテインメント/クラスタ
- HEV/EV
ちなみに、この4つのセグメントはアプリケーションで分けたものであり、TIとして、どれが最優先、ということはないとのこと。「幅広い製品を有しているため、4つのセグメントそれぞれのニーズを把握し、いずれの分野に対しても、OEMやティア1のキーパートナーとなるべく注力している」(同)ということであった。
2017年10月時点でTIが注力している車載分野。同氏が2016年に来日し、状況説明を行った際には、さらにもう1つ「パッシブセーフティ」があったが、現在は削除され、4つの領域となっている |
TIの車載向けポートフォリオの例。さまざまな製品を取り揃えることで、多様なシステムに対し、自動車のイノベーションを推進することを可能としている |
1つ目のADASだが、その性能を向上させるためには半導体の高性能化が必須となる。同氏も、「前例のないほどの速度で自動化の実現が進んでいる」との見方を示しており、こうした処理の実現に向け、同社では1.3Mピクセルのカメラを最大4台接続できるハブの設計を可能とするリファレンスデザインを用意。同デザインでは、各カメラはFPD-Link III接続および2つのCSI-2出力を使用して4ポートのデシリアライザに接続することが可能なほか、センサフュージョンの使用向けに、さまざまなセンサとの接続も可能にしているという。
2つ目のボディ・エレクトロニクス/ライティングについては、「利便性や快適性、そしてコスト削減への取り組みが重要」(同)とのことで、ボディ・エレクトロニクス向けの各種ビルディングブロックを提供することで、開発の簡素化とシステムの柔軟性の確保の両立を実現させたとする。また、同社が同日発表した「TIC12400/12400-Q1」を搭載したリファレンスデザインのような、システム全体としてイノベーションをもたらすソリューションを提供していくことが重要だとした。
TIC12400-Q1について同氏は、「これを用いることで、システムの消費電力を最大98%削減できるほか、100個以上のディスクリートを削減することで、BOMコストの低減やプリント基板の省スペース化なども実現できる」と、そのインパクトを強調する。
また、ボディ・エレクトロニクスの別の課題としては、白熱電球やHIDからLEDへと変化が進むライティングも挙げられる。こちらの課題について同氏は「今はLEDへと進んでいるが、将来的にはレーザーや有機ELも活用されるようになる。こうした複数のアプリケーションにどのように対応していくのかが重要になってくる」と説明。ドライバICなどの製品単体のみならず、リファレンスデザインなども提供することで、そうしたニーズへの対応を図っていくとした。
また3つ目となるインフォテインメント/クラスタについては、「スマートフォン(スマホ)で得られる体験を自動車にも取り入れていくことが必要になる」とし、すでにヘッドユニット内へのUSB Type-Cの移行を可能とするリファレンスデザインや、従来のClass-ABアンプのフォームファクタでデジタル入力のClass-Dアンプの利用を可能とするリファレンスデザインの提供などを進めているとした。
そして4つ目となるHEV/EVもついては、「パワートレインの電子化が大きなトレンドになっている」であり、「自動車からグリッドまで、車載システムの電子化や効率向上に必要とするビルディングブロックを供給済み」とするほか、内燃機関のエンジンから、純粋なEVに向かっている過程において、どういったステップが存在しているのかを特定済みとし、高効率なDC-DCコンバータを活用した48V化への対応や、さらなるバッテリ管理の高度化に向けた高精度な電流センシングを可能とするリファレンスデザインの提供なども進めているとする。
なお、同氏は、「今回取り上げた4つの分野は、これからもイノベーションが起こり、劇的な変化が訪れる」との見方を示しており、今後も、OEMやティア1がそうしたイノベーションを実現するための支援を行っていきたいとコメントしている。