シスコシステムズは10月18日、8月からスタートした2018年度における同社の事業戦略を説明した。この中で、代表執行役社長の鈴木みゆき氏は、「日本のデジタル変革を加速」「次世代プラットフォームの構築」「日本市場により根ざした事業展開」の3つを重点戦略として挙げた。
鈴木社長は昨年、2017年度の重点戦略として、「日本市場により根ざした事業展開」、「お客様のデジタルビジネス支援」、「統合ソリューションビジネス強化」の3つを挙げ、「日本市場により根ざした事業展開」では、日本市場に適した製品の開発・提供やエコパートナーシップ、投資の拡大。「お客様のデジタルビジネス支援」では、「IoTとデジタル化」、「クラウド」、「セキュリティ」、「次世代サービスプロバイダ」の4つにフォーカス。「統合ソリューションビジネスの強化」ではソフトウェアソリューションや業種別ソリューションを提供するとしていた。
同氏はこれらの目標を踏まえ、2017年度について、「中堅中小企業向けビジネスでは、独自ブランドであるCisco Startの拡充や、パートナーを5700社まで倍増させることで30%以上成長させ、クラウドでネットワークを管理できるCisco MerakiもNTT東日本の『ギガらくWi-Fi』に採用され爆発的に成長し、4月からは『まるらくオフィス』も開始している。セキュリティでは、サイバーセキュリティスカラシップ プログラムという教育プログラムを創設したほか、情報通信研究期機構とのサイバーセキュリティ研究協力も行っている。デジタイゼーションの加速では、京都府の木津川市とIoTを活用したスマートシティを構築し、デジタルマニュファクチャリングでは、これまでのファナック、 ヤマザキマザック、横河ソリューションサービスに加え、オオクマを新たなパトーナーに加えている。そして、日本は成長率の高さから米国本社からグローバルのトップカンパニーとして表彰された」と実績をアピール。
2018年度は「All Connected Anything Possible(すべてがつながれば、何でも可能になる)」をビジョンに掲げ、事業展開するという。
そして鈴木氏は、「2020年に向け、すべての人、プロセス、データ、モノがつながることで、生活、仕事、娯楽、学習の仕方を進化させる絶好のチャンスになる。すべての中核にあるのはネットワークであり、シスコはネットワークのリーディングカンパニーとして、日本のデジタル変革に貢献していきたい」と述べた。
同社では、2018度は「日本のデジタル変革を加速」「次世代プラットフォームの構築」「日本市場により根ざした事業展開」の3つを重点戦略として、推進するという。
「日本のデジタル変革を加速」
「日本のデジタル変革を加速」では、IoT、セキュリティ、働き方改革が中心となるという。
IoTでは、これまでのスマートファクトリーやスマートシティに加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けスポーツエンターテインメントを中心に据える。
スマートファクトリーでは、これまでファナック、 ヤマザキマザック、横河ソリューションサービス、オオクマと開発した4つのソリューションに加え、新たに6つのソリューションを提供するという。
スマートシティでは、2017年度に京都府の木津川市とスマートライティング事業を行い、街灯の明るさ調整や故障の検知を行ってきたが、今後は監視カメラのコントロールも行うほか、今年度は嵐山でスマート観光の実証事業を開始(インタラクティブサイネージにより混雑状態の回避)。さらに、東京日本橋では三井不動産と安心安全まちづくりプロジェクトを開始するという。
そして、スポートエンターテインメント領域では、これまで国内で6カ所のスタジアムで専用のWi-FiやCisco Visionなどを展開してきたが、今年度はさらに4つのスタジアムで新たにこれらを展開するという。
「次世代プラットフォームの構築」
「次世代プラットフォームの構築」では、「新しい時代のネットワーク」、「マルチクラウドな世界の実現」、「データの力を解放」、「セキュリティ」、「次世代サービスプロバイダ支援」を柱にするという。
新しい時代のネットワークでは、ネットワーク接続が爆発的に増大するコネクションに対して、新しいネットワークが必要になるとした上で、コンテキストを活用し、誰が、何を、どうしたいのかというコンテキストを集めて脅威を可視化。また、インテント主導で自動化し、使えば使う度ほど賢くなるネットワークを構築していくという。同社は、これをCisco DNAで実現していくとした。
マルチクラウドな世界の実現では、ACI Anywhereによって、複数にまたがったデータセンターでも使える一貫したポリシーやセキュリティを提供するほか、一貫した管理を行うCisco Intersightを提供するという。
データの力を解放では、データ取得・処理・移動を行うCisco Kineticという新しいデータプラットフォームで、製造業やスマートシティにフォーカスし、提供していくという。
セキュリティでは、管理の境目がなくなっている現状では、エンドポイント、クラウド、ネットワークを統合してエンドポイントで管理していくことが必要だとした上で、脅威インテリジェンスの「TALOS」という組織を組み合わせてセキュリティを担保するほか、今年度はサービス強化を行っていくという。
「次世代サービスプロバイダ支援」では、爆発的に増大するトラフィックに課題を抱えるサービスプロバイダに対して、コアビジネスにフォーカスし、キャリアグレードの装置とサービスを提供。また、装置からの情報を分析して自動化。AI、マシンラーニングを駆使した運用を目指すという。さらに、サービスプロバイダーとの協業を強化し、ビジネス創設を行っていくという。
「日本市場により根ざした事業展開」
日本市場により根ざした事業展開では、昨年大きな成長を遂げた「Cisco Start」や「Cisco Meraki」などで中堅・中小企業向けビジネスをさらに加速させるため、東日本、西日本の地域営業体制を強化し、東日本、西日本で責任者を任命。各地域での企業、自治体、パートナーとの接点に関する責任を1本化する。これによって、より深いリレーションシップを築いていくという。
また、「Cisco Start」や「Cisco Meraki」などのボリュームビジネス拡大に向け、新たなパートナーの獲得し、エコシステムの拡大を図る。
そのほか、ファクトリー分野のIoTビジネスを推進するため、国内でIoT企業や国内主要ベンダーとの連携を強化していくという。