東京農工大学は、通常歩行中に生じる下肢の捻じれストレスが、足部と骨盤のあいだの相対的な捻れ量に相関することを明らかにしたと発表した。
同研究は、東京農工大学大学院工学研究院の身心一体科学研究チームの跡見順子客員教授、大川孝浩社会人博士と、帝京科学大学・理学療法学科の跡見友章准教授、JAXAの長谷川克也研究員らの共同研究グループによるもので、同研究成果は、「Gait and Posture」に掲載されるのに先立ち、9月10日にWeb上で掲載された。
人間は、歩行時に骨盤や大腿骨、脛骨などそれぞれが回旋運動をしており、接地時、足が外側に回旋する傾向がある。一方、床面と足底間で生じる摩擦を利用して推進力を得ているが、その際足の回旋運動を止めようと反対向きの力がかかっている。
コラーゲンから成る骨は、捻じれストレスに対して力学的に脆弱であることが知られており、同研究グループは捻じれストレスの指標として、回転する力の強さであるフリーモーメント(FM)に着目。近年ではFMが大きくなってしまうと、長距離ランナーの脛骨疲労骨折や脛骨の捻じれ変形と関係があることが報告されているが、FMが大きい、または小さい歩き方の特徴は不明だったため、三次元動作解析装置を用いて研究が行われた。
同研究グループが解析した歩行パラメータによると、足部と骨盤間の相対的な捻じれ量だけがFMの大きさに影響を及ぼし、その捻じれ量が少ないとFMが大きくなることがわかった。また、足部と骨盤間の相対的な捻じれ運動は足が身体を支えている際に起こり、主に股関節を内側に向かって回旋させる運動(内旋運動)で行われている。
つまり歩行中、反対の足へ重心が移る頃に股関節で内旋運動が生じない場合は、下肢に生じる捻じれストレスが大きくなってしまうことが明らかになった。この結果は、この足底部に生じる捻れストレスの指標となるFMが、股関節の柔軟性と関係することを示唆しており、股関節の柔軟性が少ないほど下肢へ捻れストレスが増大する傾向があることがわかった。足底と股関節は距離的に遠いので関係なさそうだが、股関節の柔軟性や使い方に問題があると、足底に加わった捻れの力が膝関節に影響を与え、変形を引き起こす可能性が考えられるという。
今後は、継続した研究により、脛骨や大腿骨の捻じれが強くなる小児麻痺患者特有の歩き方の解明や、健康寿命の延長に役立つロコモティブ症候群予防など、疾患に対するリハビリテーションの一助となることが期待されるということだ。