千葉工業大学(千葉工大)と大成建設は10月16日、建設現場で利用する自律型鉄筋結束ロボット「T-iROBO Rebar」を開発したと発表した。鉄筋コンクリートの施工時、並べた鉄筋の交差部をワイヤーで縛る結束作業を自動化するロボット。2018年度から現場への導入を本格化し、鉄筋工事の生産性向上を目指すという。

自律型鉄筋結束ロボット「T-iROBO Rebar」

このロボットを使って結束した鉄筋の交差部

ロボットを開発した背景にあるのは、少子高齢化による労働者不足の問題だ。大成建設・先進技術開発部の高橋要氏は「建設業では、2025年には35万人の労働力が不足する」という見通しを述べた上で、その対策として「単純作業はロボットに置き換え、人間は複雑な作業に注力する」ことを考えたという。

大成建設・先進技術開発部の高橋要氏

トンネル工事は新しい工法の登場により、生産性は劇的に向上した。しかしその一方で、あまり変わっていなかったのが、鉄筋コンクリートの工事だ。この中で、工程の20%程度を占める鉄筋の結束作業は、単純作業の繰り返し。比較的自動化しやすいと考えられることから、千葉工大にロボットの開発を依頼した。

トンネル工事は生産性が10倍に向上したが、ほぼ変わらない分野もある

鉄筋の結束作業は、コンクリートを流し込む前に行う。基本的に単純作業だ

T-iROBO Rebarは、重量20kg程度の小型ロボット。4輪駆動方式を採用しており、鉄筋をレールのように利用して移動しながら、交差部を見つけてワイヤーで結束することができる。レーザーセンサーで障害物やレール端を検出したら、横の列に移動。雑巾がけのように縦横の移動を繰り返し、指定したエリアの結束を自動で行う。

T-iROBO Rebarの動作デモ

この車輪を使い、電車のように鉄筋の上を移動する

結束の工具は、これまで使っていたものを改造して利用

前後4カ所のレーザーセンサーでは、レール端を検出する

左右8カ所のレーザーセンサーを使い、周囲の障害物を確認

T-iROBO Rebarの仕様

ロボットの移動ルート

ロボットの構成は非常にシンプルだが、開発を担当した千葉工業大学・未来ロボット技術研究センター(fuRo)の西村健志研究員は、「何でもできて、どんな環境でも動くような、すごいロボットを作るのが目的ではない」と述べる。

千葉工業大学・未来ロボット技術研究センターの西村健志研究員

高価なセンサーを搭載し、完全に自動化することも工学的には可能だろうが、そうするとシステム全体が高コストになったり、運用が複雑化したりして、結果的に普及しない。機能を絞ることで低コスト化し、それ以外の部分については、ロボットに合わせて工法自体を変える。「ロボットを含んだ新しい工法を作り、省人化を図る」(同)のが狙いだ。

上記の動画を見てもらえば分かるが、このロボットの結束作業は決して早くない。明らかに人間がやった方が早いだろう。しかしロボットであれば、より長時間の運転が可能だし、夜間でも問題無い。現段階ではバッテリ容量の都合で稼働時間には制約があるが、そのあたりは今後、ニーズやコストを踏まえ、改良していけばいい。

今後、現場での実証実験を続けた上で、2018年度から本格的に導入する計画。まずは大成建設の現場から利用することになるだろうが、同社先進技術開発部の上野純部長は、「弊社だけで省人化しても意味は無い。販売ルートの検討はまだやっていないが、ウチだけで囲い込むつもりは無い」として、業界全体への普及に努める意向を示した。

大成建設・先進技術開発部の上野純部長

今回の取り組みについて、fuRoの古田貴之所長は「ロボット技術を社会に実装し、日本がこれからどうやって生きていくか。1つのカギになるのでは」と期待する。建設業に限らず、今後はあらゆる分野で人手不足が深刻な問題になる。これを解決するため、「ロボット技術を使って、現場の仕事の改革をこれからもやっていきたい」と述べた。

千葉工業大学・未来ロボット技術研究センターの古田貴之所長