TrendForceの半導体メモリ調査部門DRAMeXchangeは, モバイル向け(LPDDR)DRAM製品の平均販売価格が、2017年第4四半期(10~12月期)に前四半期比で10~15%ほど値上がりするだろうとの見通しを発表した。

この価格上昇は、スマートフォン市場における年末商戦の繁忙期という季節的な要因のほか、DRAMのさまざまなアプリケーション間の価格差を修正しようとしているDRAMサプライヤの意図に起因したものであり、モバイルDRAMの第4四半期における前四半期比の価格上昇割合は、他のアプリケーションで使用されるDRAMの価格上昇率と比較しても最大になるとDRAMeXchangeは予測している。

これにより、2017年初めから、PC DRAMの平均価格(1Gビット当たりのドル)がモバイルDRAMよりも高い、という状況が終わりを迎えることになるという。

期待薄のDRAMメーカーの製造ライン拡張

DRAMeXchangeは、大手DRAMサプライヤが、今年に引き続き2018年も、生産能力の増強をわずかにとどめると指摘している。2018年、DRAMメーカーは、既存ファブのプロセスフローを最適化して歩留まりを上げるとともに、次世代のプロセス微細化技術を導入することによってウェハ1枚当たりから得られるチップ数を増やして出荷数量を上げる計画であるが、工場を拡張するような大規模な生産能力拡張プロジェクトを実施する可能性は低い。したがって、2018年の大半の間、すべて用途のDRAMの供給が逼迫するとDRAMeXchangeは見ている。

さらに、米国にあるグローバルな主要なIT企業(米Google、米Facebook、米Amazon、米Microsoftなど)が新しいデータセンターを構築するにしたがって、サーバDRAM製品の需要も着実に増加している。直近では、Intelのサーバ向けCPUの新製品であるPurleyプラットフォームの発売がサーバ需要に貢献するとも言われており、DRAMサプライヤは、製造する製品構成を調整して、サーバDRAMの生産比率をさらに高める可能性も高く、そうしたことからも2018年のモバイルDRAMは、出荷数量、価格ともに影響を受ける可能性があるという。

それでは、2018年第1四半期の動きはどうなるのかというと、毎年、同四半期は年末商戦の影響で需要が低迷するという季節的な逆風が吹く。DRAMeXchangeは、こうした季節的な要因から、DRAMの供給ひっ迫を緩和し、前四半期と比較して緩やかな動きになるのではないかとの予想を示している。しかし、その季節的な影響も市場全体に重大な影響を及ぼすほど強くはなさそうだともしており、DRAM製品の契約価格が下落する可能性は低いだろうと見ている。

低価格帯スマートフォンのメモリ搭載量が増加

2017年、モバイルDRAMの価格が高騰したため、スマートフォンメーカーは搭載メモリの容量を増やしたくても増やせないというジレンマに陥った。例えばAndroid系スマートフォン市場では、2017年の後半に発売される主流の旗艦スマートフォンは、上半期にリリースされた旗艦スマートフォンと同様、4GBまたは6GBのLPDDR4Xを搭載しているものがほとんどだ。AppleのiPhoneシリーズに至っては、最新モデルでも3GBにとどまっている。

モバイルDRAM価格の高騰により、ハイエンドからミッドレンジのスマートフォンのメモリ仕様が向上する見込みがなくなったものの、DRAMeXchangeでは、ミッドレンジからローエンドのスマートフォンのDRAM容量は2018年でも増加するものと見ている。これは、2018年に発売される予定の次世代のエントリモデルのハードウェアがアップグレードされ、カメラやディスプレイはじめスマートフォン全体がスムーズに動作するようにメモリを追加する必要があるからである。

スマホもタブレットもLPDDR4へ世代が交代

また、LPDDR3からLPDDR4への世代交代が勢いを増している。スマートフォン市場におけるLPDDR4シリーズの需要がハイエンドを中心に増しており、DRAMeXchangeでも、2018年はLPDDR4がハイエンドスマートフォン市場の主流を占めると予測している。

なお、この世代交代は、タブレット市場でも生じている。Intelは、システム全体の性能を最大限に引き出すために、LPDDR4シリーズと相性の良い新しいモバイルプロセッサプラットフォームを発表しており、この新プラットフォームを採用するタブレットメーカーも、LPDDR3からLPDDR4に徐々に切り替わることとなる。