産業技術総合研究所(産総研)は10月13日、グラフェンの両側をメソポーラスシリカで挟んだサンドイッチ型複合体において、グラフェン表面に対して垂直に配向した細孔の孔径や深さを制御できる技術を開発したと発表した。
同成果は、産業技術総合研究所環境管理研究部門水環境技術研究グループ 王正明上級主任研究員、カナダトロント大学G. A. Ozin教授らの研究グループによるもので、10月12日付の国際科学誌「Advanced Functional Materials」に掲載された。
メソポーラスシリカは、孔径2~50nmの細孔が規則正しく並んだ多孔質シリカ。グラフェンとの複合化により、両者の特長を兼ね備えた材料が期待されている。しかし、センシング材料などへの応用では、基板に対して細孔が垂直に配向することが求められるが、従来の合成技術ではシリカの細孔が基板に平行配向した材料が得られることが多く、細孔を垂直に配向させるには、高価な鋳型分子や外場の適用が必要であった。
同研究グループはこれまでに、グラフェンの両側を細孔がグラフェン面に垂直に配向したメソポーラスシリカで挟んだ複合体が比較的簡単な方法で合成できることを示していたが、今回の研究では、このサンドイッチ構造の形成機構をさらに明確にし、細孔の深さ、孔径を制御できる複合材料を開発した。
まず、細孔の鋳型分子である界面活性剤であるミセルがグラフェン酸化物表面に吸着した際の構造について、小角X線散乱技術を用いて合成時と全く同じ条件の界面活性剤とグラフェン酸化物の混合溶液のその場測定を行ったところ、グラフェン表面に一定の秩序で吸着ミセルが並んでいることがわかった。
そこで分子鎖の長さの異なる界面活性剤を用いてグラフェン酸化物上の吸着ミセルのサイズを変え、グラフェン-メソポーラスシリカのサンドイッチ型複合体を合成したところ、界面活性剤の鎖長が長くなるにつれて、複合体の細孔の孔径が大きくなることがわかった。すなわち、界面活性剤の鎖長を変化させることで、シリカメソチャンネルの孔径を1nmから5.5nmまで調節することが可能となる。また、反応時間を変化させることによって、シリカメソチャンネルの深さを制御できることも明らかになっている。
シリカメソチャンネルの深さと孔径は、メソポーラスシリカ膜の細孔内に侵入した分子の吸着力、吸着分子・反応分子の拡散距離、選択性を持つ分子のサイズの閾値などの性質に影響する重要な因子であるため、応用範囲は広がっていくものと考えられるという。