名古屋大学(名大)は、植物の発生や形態形成に決定的に重要な役割を果たす細胞内の高次構造を発見したと発表した。
同成果は、名古屋大学大学院理学研究科の五島剛太 教授らの研究チームと、基礎生物研究所生物進化部門の長谷部光泰 教授、同 村田隆 准教授、ベルギーのケント大学の共同によるもの。詳細は米国の学術誌「米国アカデミー紀要(PNAS)」オンライン版に掲載された。
動植物の発生過程では、さまざまな種類の細胞を作り出すために、非対称な細胞分裂が頻繁に起こる。動物細胞では、130年前に「中心体(セントロソーム)」と呼ばれる構造体が発見され、これまでに、中心体が分裂の非対称性が保証することが証明されている。しかし、植物は進化の過程で中心体を失ったため、どのように細胞分裂の対称性・非対称性が制御されているかは謎であった。
今回の研究では、コケ植物の幹細胞や種子植物の培養細胞を使って、動物の中心体に相当する構造を発見し、これを「ガメトソーム」と命名。ガメトソームを人為的に破壊すると、幹細胞に特徴的な非対称分裂が認められなくなったという。
このことから、植物では多様性の幹細胞が、動物よりずっと長い間、維持されていることが知られているが、植物幹細胞はガメトソームの場所を操ることで、幹細胞性を維持しているのではないかと推測できると研究グループは説明している。