芝浦工業大学(芝工大)は、植物や木に含まれる成分(セルロース)からグルコース(バイオエタノールを得るための中間材料)への変換を効率的に促進するためのカーボン固体酸触媒を開発したと発表した。
同成果は、芝浦工業大学材料工学科の石﨑貴裕 教授らによるもの。詳細は英国の学術誌「Green Chemistry」に掲載された。
バイオエタノールは、通常サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを発酵させ、蒸留して生産する。一方、地球人口の増加による世界的な食料不足が予測されており、食料系バイオマスを利用しない非食料系バイオマス、例えばセルロース(天然の植物・木に含まれる炭水化物)を利用した生産が望まれている。
セルロースを用いてバイオエタノールを生産する場合、セルロースからグルコースに変換する必要があるが、変換を行う際に利用する従来の固体酸触媒は120℃以上に処理温度が上げられず変換効率の向上が難しい。また、従来のカーボン固体酸触媒(今回開発の技術とは異なる技術を用いて生成したもの)は作製時に発煙濃硫酸を用いた長時間処理が必要で環境負荷が極めて高いという欠点があった。
今回の研究では、1mol/l以下の希硫酸溶液中でソリューションプラズマ(SP)により30分程放電し、短時間かつ常温環境でカーボンをスルホン化することで、新たなカーボン固体酸触媒を生成する技術を開発した。
同技術は、従来のカーボン固体酸触媒を得る技術とは異なり、カーボンをスルホン化する際に必要であった薬品耐性プラントの設備、加熱処理、硫酸回収時の大きな消費エネルギーを必要とせず、環境への影響を低減することができるという。また、このカーボン固体酸触媒を用いてセルロースを変換すると、セルロースから糖類への変化率が最大で30%以上、グルコースの選択性が80%以上であり、従来のカーボン固体酸触媒と同等以上の性能を有しており、市販の触媒よりも優れているとしている。
さらに、回収液中の硫酸イオン濃度の流出量も少ないという特徴がある。さらに、今回の研究で合成されたカーボン固体酸触媒は、再利用が可能であり、再利用による変換効率の低下はほとんどなかったとしている。
なお、研究チームは同成果によって、新開発のカーボン固体酸触媒に関して、特許申請を行ったとするほか、企業などの共同研究先を見つけ、材料の機能向上や実用化を目指すとしている。