日本IBMは10月12日、都内で記者会見を開き、システム復旧の自動化ソリューション「IBM レジリエンシー・オーケストレーション」を発表した。同ソリューションは、IBMが2016年11月に買収したインドのSanovi Technologiesのソフトウェアを既存のIBMレジリエンシー・サービスのラインアップに追加したものとなる。
新ソリューションは、顧客の復旧環境監視、ワークフローによるシステム切り替えの自動化、復旧対策状況の可視化のほか、システム復旧手順を検証してレポートを自動作成する。
日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業本部 レジリエンシー・サービス事業部長の高瀬正子氏は「近年、クラウド化、ハイブリッド化の影響により、システムやアプリケーションなどが複雑化しているが、そのような環境において日本の企業は最低限のシステム投資で最高のパフォーマンスを求める傾向にある。そのため、売上に貢献するアプリケーションに投資しても、システム復旧に関しては投資が及ばないのが現状となっている。一方で、実際に顧客やITベンダーはシステム復旧に対して、不安を抱えている」と、日本企業におけるシステム復旧の考え方に言及した。
そして同氏は「システム停止が発生した際、迅速に復旧しなければならないが、それには訓練・実行・評価を行うのが一般的だ。しかし実際には、『復旧手順書が多数存在する』『復旧作業に時間を要する』、『リハーサルや準備が煩雑』『専門家が必要』『復旧要員が現場に到着しないと復旧できない』といった課題を抱えている。これらの課題に対して、自動化ツールによる復旧環境の実効性を高めることが不可欠となっている」と、指摘した。
こうした課題を解決すべく、新ソリューションは主要機能として「ダッシュボード」「ワークフロー」「ドライ・ラン」「レポーティング」の4つを備える。
ダッシュボードはRTO(Recovery Time Objectiv:目標復旧時間)/RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)/データ同期状況やリカバリ対応状況、対象システムごとの対策状況の可視化が可能。対策状況を一覧で確認できるダッシュボード機能を提供することで、RTO/RPOの遵守状況やアラート状況をリアルタイムに可視化することを可能としており、復旧時間を測定し、期待通りの時間を把握することができるという。
ワークフローについては、実績あるワークフローの活用や標準ライブラリの提供、既存シェルの取り込みができるほか、実装方法別に切り替え運用手順をワークフローとしてコード化しており、テンプレートとして提供する。そのため、ユーザーが作成したスクリプトをワークフローテンプレートに取り込んだり、切り替え運用手順に従って各ステップを変更したりすることを可能としている。
また、ストレージからミドルウェア、クラウド環境まで幅広くサポートし、製品特有のコマンドなど約400種を用意しているため新たにスクリプトを用意する必要がなく、コマンドラインインタフェースが提供される製品は、サポート追加要求を提出することができる。
ドライ・ランは、本番稼働中にシミュレーションを行い、復旧手順や実行結果を基に問題がある場所を確認できる。これにより、DB(データベース)管理者と運用担当者間の情報連携の漏れなどにより発生する切り替え手順の失敗を未然に防止するとともに、実行・結果の確認ができるため夜間など影響が少ない時間帯にシミュレーションの実施を可能としている。
レポーティングは実行結果の自動記録によるワークロード削減、問題が発生した場所特定の迅速が図れるという。ワークフローを実行・検証した結果を自動で記録し、実行に必要だった時間や結果、ステップごとの状況などを確認することができる。
高瀬氏は新ソリューションについて「専門家への依存度を50%、DRテスト時間を60%、リカバリの人的資源を75%、それぞれ削減可能としている。新ソリューションを活用すれば、手動によるマニュアル作成や手作業による復旧などの自動化を図ることができる」と、説明した。
なお、価格(税別、仮想サーバ1システム単位)は12万3800円~、見積もり単位は仮想サーバ/物理サーバ単位となる。提供開始は2017年11月1日を予定し、直販だけでなく、パートナー、インテグレーター経由での販売に加え、IBMマーケットプレイスでの提供を想定している。
新ソリューションは、ソフトウェアとして提供するため、顧客の要件に合わせて柔軟なシステム復旧の環境を構築できる。また、運用支援までを含めたサポートを希望する顧客にはクラウドサービスとして「IBM クラウド・レジリエンシー・オーケストレーション」の提供をすでに開始している。