東京工業大学(東工大)は10月12日、作動中の燃料電池内の反応生成液水の挙動をリアルタイム・高解像度で可視化できる技術を開発したと発表した。

同成果は、NEDO事業において技術研究組合FC-Cubicおよび東工大 平井秀一郎教授らのグループが実施する研究テーマ「触媒・電解質・MEA内部現象の高度に連成した解析、セル評価」によるもの。関連内容は、第232回米国電気化学会の10月5日のセッションで発表された。

燃料電池は、水素と空気中の酸素を触媒上で反応させて、水を生成する際に発生するエネルギーを電力に変換するシステム。生成された液体水は燃料電池内に溜まることによって、供給ガスの輸送を妨げる場合があることが知られており、この挙動を正確に把握することは重要な課題のひとつとなる。しかし、従来は発電性能から間接的に判断されており、作動中の燃料電池内の反応生成液水を高解像度で長時間にわたって可視化できる装置はなかった。

今回、同研究グループは、軟X線ビームの平行化技術とCMOS検出器を組み合わせ、観測用の燃料電池セルに工夫を加えることによって、実験室に設置可能な大きさの装置で、高解像の反応生成液水の可視化像を得ることに成功した。同技術では、燃料電池内部の各界面層において、反応生成液水の挙動をµmレベルで計測することができるという。

同研究グループは今回の成果について、高性能化・高耐久化を目指す燃料電池の特性改善や設計指針に資する技術開発の加速が期待されると説明している。

可視化された反応生成液水の時間変化 (出所:東工大Webサイト)