愛媛大学などは10月11日、分子結晶におけるスピン液体の起源を解明したと発表した。
同成果は、愛媛大学大学院理工学研究科 山本貴准教授、理化学研究所、大阪大学、東京理科大学、豊田理研、高輝度光科学研究センターらの研究グループによるもので、10月10日付の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
スピン液体は、1973年に初めてその存在が理論的に予測されたもの。正三角形が組み合わされてできた格子の各頂点に電子が1個ずつ位置する条件では、特定の2つの電子のペアを作れないなど、電子スピンが整然と秩序化できなくなる。この場合、磁性や伝導性に不思議な性質を示すスピン液体になることが期待されている。
同研究グループは今回、スピン液体の特性を示す分子性結晶である金属ジチオレン錯体塩の電荷と分子の振る舞いに着目。分子周辺の電子の密度と、分子が変形する様相を計測した。
この結果、分子は2個・4個・8個といった集団同士で絶えず組み替わり、また分子の電荷量は一定ではないことが明らかになった。これは、分子の集団同士の組み換えに連動して、電子も複数種のペア同士で組み替わることを意味している。この現象は、電子を収容する分子軌道のエネルギーが組み替え前後でも変化しないことに起因するという。
同研究グループは今回の成果について、電荷とスピンが独立して伝導するデバイス材料の開発などに指針を与えるものと説明している。