理化学研究所(理研)は、かび毒のひとつテヌアゾン酸の生産制御因子の遺伝子を2個同定し、テヌアゾン酸の生産制御メカニズムを明らかにしたと発表した。
同研究は、理研環境資源科学研究センターケミカルバイオロジー研究グループの尹忠銖研究員、本山高幸専任研究員、長田裕之グループディレクターの研究チームによるもので、同研究成果は、9月15日付けで米国化学会雑誌「ACS Chemical Biology」に掲載された。
テヌアゾン酸はかび毒として知られる化合物で、タンパク質の合成を阻害し、植物に対する毒として作用する。植物病原糸状菌のAlternaria(アルタナリア)から発見され、1957年に報告された後、Alternariaだけでなく、イネいもち病菌など多くの植物病原糸状菌が生産することが分かっている。同研究チームは、テヌアゾン酸を特定の条件でのみ生産するイネいもち病菌を用いて生産メカニズム解明のための研究を行い、これまでに、2種類のテヌアゾン酸生産誘導条件を見いだし、生合成遺伝子TAS1を同定し、生合成メカニズムを明らかにすることに成功している。
今回、研究チームは、これらの生産誘導条件及び生合成遺伝子を利用した解析により、テヌアゾン酸の生産制御に関与するタンパク質を見いだし、生産制御メカニズムを明らかにすることに成功した。まず、テヌアゾン酸生産誘導条件で解析することにより、テヌアゾン酸の生合成遺伝子TAS1の近傍にあるTAS2の産物TAS2がテヌアゾン酸生産を正に制御する転写因子であることを明らかにした。
また、糸状菌の二次代謝の制御因子として知られるLaeAのホモログ(相同体)であるPoLAE1の遺伝子を操作することにより、PoLAE1もテヌアゾン酸生産を正に制御する転写因子であることを見いだした。さらに、遺伝子操作株を用いた解析により、PoLAE1の下流でTAS2が働いていることを見いだしたという。
同研究の成果により、かび毒であるテヌアゾン酸の効率的な生産制御が可能になることが期待できる。例えば、2種類の制御タンパク質に対する阻害剤を開発することにより、テヌアゾン酸の生産を抑制することが可能になるという。また、テヌアゾン酸は植物に対して病害抵抗性誘導を引き起こす活性も報告されており、生産を適切に制御することにより、植物病害制御を行うことができる可能性もあるということだ。