10万6000名の従業員のデジタル端末を、5775名のIT部門で運用管理するIntel.そんな同社のIT部門の1年間の取り組みを公開するレポート「インテル IT パフォーマンス・レポート 2016 ~ 2017年」が公開されたが、同社では、その公開併せ9月29日に、同レポートに関する説明会を開催した。
2016年は、製品のデザインに向けたサーバやストレージの数は増加し、データセンターの数は98となり、管理するIT機器は約22万台(内訳はモバイルPCが15万1900台、スマートフォンが5万3780台、デスクトップPCが1万4500台、タブレットが500台)となり、新たな戦略として、設計や製造、開発といったコアビジネスではない部分におけるSaaSベンダが提供するクラウドサービスの活用などが進められたという。
こうしたIT環境に対する最適化の取り組みにより、5億ドル市場の売り上げ収益の増加や、市場投入までの製造期間の最大39週短縮といったことを実現したという。こうした取り組みの多くが、マシンラーニングを活用したものだと、同社では説明している。特に、工場のスマート化は、プロセスの微細化に伴って長期化しているウェハ製造工程の短縮や歩留まりの向上のためには必須の技術であり、過去数十年にわたって自動化が進められてきたという。
例えば、同レポートでは、「稼働時間の増加」、「生産の迅速化」、「生産量の増加」の3つの主要領域での効率向上を毎年実現してきており、現在では、1日あたり50億以上のデータポイントを処理することで、エンジニアが必要な情報を抽出するための時間が、従来の4時間から30秒に短縮することを実現したとしているほか、重大なエラーとそうでないエラーを区別し、製造機器が順調に動作している場所と効率が向上する可能性がある場所を示すグラフを工場のエンジニアに提示する「データ可視化ツール」の作成により、有意な改善を実現したとする。
また、製品の開発においては、製品開発の設計段階で、従来方法では見つけられなかったバグを検出できるマシンラーニングプラットフォーム「CLIFF」を活用することで、過去の数千におよぶテスト記録を高速に参照して、隠れたパターンを明らかにできるようになったことから、市場投入時間の短縮と製品品質の向上を実現したとしている。具体的には、標準の回帰テストに比べ、CLIFFでは、対象となる機能の検証が60倍に増加したほか、各実行で新たな問題の特定が30%増加。1つの製品で20以上の新たなバグの特定を実現したとのことで、すでに同社の10におよぶプロセッサ研究開発組織で稼動しているが、今後数か月以内に、さらに多くの組織での活用を開始する計画だとしている。
なお、同社では、2017年以降に製造工程の変革をもたらす製造ゲームチェンジャープログラムとして、「AR(拡張現実)」と「リモートツール制御」の2つのプロジェクトを推進していくとしている。ARは、自社開発のスマートグラスによる対話型リモートコミュニケーションツール「Intel Remote EyeSight(インテルRES)」を開発。人と人、人と機械のハンズフリーによるコラボを実現し、作業手順のビデオを見ながら、複雑な装置の修理に取り組んだりすることが可能になるというものとなっている。もう一方のリモートツール制御は、後工程(組み立て・検査工程)で、前工程同様の利益を獲得することに向け、ツールごとにオペレータを配置するのではなく、ツール群のコマンドセンターを用意しようというもの。これにより、工場技術者の効率を将来的には5倍に向上するほか、技術者は1つの機械に縛り付けられることがなくなり、より有益な活動に取り組むことが可能になるとの見込みを示している。