東京工業大学(東工大)は10月5日、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業において、作動中の燃料電池内の反応生成液水の挙動をリアルタイム・高解像度で可視化できる技術の開発に成功したと発表した。

装置のシステム概要図(出所:NEDO Webサイト)

同成果は、東工大の平井秀一郎 教授らの研究グループによるもの。詳細は、第232回米国電気化学会の10月5日のセッションで発表された。

燃料電池は、水素と空気中の酸素を触媒上で反応させて、水を生成する際に発生するエネルギーを電力に変換するシステムだ。この生成された液体水は燃料電池内に溜まることによって、供給ガスの輸送を妨げる場合があることが知られている。燃料電池の性能向上のためには生成された水の挙動を正確に把握することが重要な課題の1つとされているが、従来は発電性能から間接的に判断されるに留まっていた。

今回の研究では、軟X線ビームの平行化技術とCMOS検出器を組み合わせたほか、観測用の燃料電池セルにも工夫を加えることによって、実験室に設置可能な大きさの装置を開発、高解像の可視化像を得ることに成功した。また、燃料電池の発電特性に影響が大きい燃料電池内部の各界面層での反応生成液水の挙動をμmレベルで計測する技術も開発したという。

研究グループは同成果について、反応挙動が激しく変化する作動中の燃料電池内部(各層や各界面)の反応生成液水の挙動の把握が可能となり、今後の燃料電池の設計に貢献することができるとしている。