京都大学(京大)は10月6日、生きたサンゴを家として持ち運ぶ新種のヤドカリを調査し、「スツボサンゴツノヤドカリ」と命名したことを発表した。
同成果は、京都大学大学院人間・環境学研究科の修士課程 井川桃子氏(研究当時)、加藤真 教授らの研究グループによるもので、9月20日付の国際科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
砂泥底を自由に動きまわって生活する単体サンゴであるムシノスチョウジガイやスツボサンゴの内部には渦巻形の空洞があり、そこには通常、環形動物のホシムシが棲み込んでいる。サンゴがホシムシの棲み家となってホシムシを守る一方で、ホシムシはサンゴを引きずって移動し、砂泥中へ沈むのを防ぐという共生関係があることが知られているが、これまで共生者がまったく別の生物に置き換わる事例は知られていなかった。
今回、同研究グループは、奄美群島加計呂麻島で採集された生きたサンゴにおいて、ホシムシではなく新種のヤドカリが棲み込んでいることを発見。同ヤドカリの形態や行動を観察し、サンゴとの共生関係における同ヤドカリの役割や特徴を調べたところ、ツノヤドカリ属の新種であることがわかったため、「スツボサンゴツノヤドカリ(Diogenes heteropsammicola)と名付け、新種として記載した。
また同ヤドカリにおいては、ホシムシと同様にサンゴを牽引し、転倒や砂泥中への埋没からサンゴを救出している様子が確認されている。貝殻に棲むヤドカリの場合、ヤドカリは成長するとより大きな貝殻へ引っ越す必要があるが、スツボサンゴツノヤドカリはヤドカリと共に成長する生きたサンゴを家としているため、生涯引っ越しをしなくて良いものと考えられるという。
同研究グループは、それぞれの共生の詳細な比較やサンゴ化石の観察などを通じて、宿貸し・牽引共生の進化の歴史を明らかにしていくことが今後の課題であるとしている。