ディープラーニングを事業の核とする企業および研究者を中心とするグループは10月4日、日本の産業がディープラーニングをより有効に活用し、産業競争力を高めることを目指し、「日本ディープラーニング協会(Japan Deep Learning Association:JDLA)を正式に設立したことを発表した。
同協会の設立時の正会員企業は以下のとおり(アルファベット表記順)。
- ABEJA
- ブレインパッド
- FiNC
- GRID
- IGPI ビジネスアナリティクス&インテリジェンス
- エヌビディア(NIDIA)
- PKSHA Technology
- STANDARD
- UEI
- クロスコンパス
- zero to one
- (賛助会員としてトヨタ自動車)
また、有識者会員は以下の通り(五十音順)。
- 浅川伸一 (東京女子大学 情報処理センター 博士)
- 江間有沙 (東京大学 教養教育高度化機構 特任講師)
- 岡谷貴之 (東北大学大学院 情報科学研究科 教授)
- 尾形哲也 (早稲田大学 基幹理工学部表現工学科 教授)
- 巣籠悠輔 (情報医療 最高技術責任者/東京大学大学院 工学系研究科 招聘講師)
- 中嶋浩平 (東京大学大学院情報理工学系研究科 特任准教授)
- 松尾豊 (東京大学大学院 工学系研究科 特任准教授)
同協会の理事長に就任した東大の松尾 特任准教授は、同協会の設立趣旨を、「人工知能の進展の柱になる技術としてのディープラーニングを、日本全体の産業競争力の強化につなげていくことを目的とし、さまざまな問題点や課題を少しでも解決して、産業全体の発展につなげていくために設立された」と説明。参加メンバーで、この1年ほどの間、どのようにやっていくのか、といったことなどを議論を進め、活動の方向性が見えてきたことから、今回の設立発表に至ったとした。
設立時点の同協会の活動の概要は以下の5つ。
- 産業活用促進
- 公的機関や産業への提言
- 人材育成
- 国際連携
- 社会との対話
実際の活動としては、「産業活用促進委員会」「試験委員会」「プログラム認定委員会」「パブリックコミュニケーション委員会」の4つの委員会を組織し、それぞれの目的に向かって活動を進めていくとする。
最重要活動となる産業活用促進について、同協会では、「まだまだディープラーニングに対する企業のノウハウや、実際に扱える事業者数が少ない。また、扱える企業としてベンチャー企業が多いため、スケールが不足しているのではないか、といった懸念などの課題がある」とし、協会の活動を通し、事例の共有や業界をまたいだ連携、複数のベンチャー企業をプロジェクト化し、1社では実現できない規模のプロジェクトに取り組む組織化などの実現を図っていくとする。
また、人材育成の側面としては、みずほ総研による調査では2020年までにAI関連人材として4.8万人が不足するとの予測が出ているが、どういった学習をすれば良いのか、といった体系が構築されておらず、ディープラーニングを学びたい人に向けた機会の提供も不足していると指摘。協会として、ディープラーニング活用に必要な人材の育成に向け、ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して事業応用する能力を持つ人材(ジェネラリスト)と、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力を持つ人材(エンジニア)の両輪を育てていく必要があるとの認識を示し、「ジェネラリスト検定」と「エンジニア資格」の2つの検定を実施していくことを明らかにした。
第1回目のジェネラリスト検定は、2017年12月16日13~15時にかけてオンライン上にて実施される予定。受験資格はないが、受験料は1万2960円(初回 学生は9720円)程度としており、申し込み期間は11月17日~12月9日の期間を予定しているとする。
一方のエンジニア資格は、受験前に同協会が認定した50時間程度の教育プログラムを受講しておくことが受験資格となっている(プログラムは認定を受けた企業や高等教育機関が提供する予定で、この募集はすでに開始済みだという)ため、第1回目の試験は2018年4月ころに開催する予定だとしている。第1回試験は東京と大阪の会場にて行われる予定だが、受験者が多ければ、会場は増やす可能性もあるとしている。
なお、同協会では、こうした取り組みを通じて、2020年にはジェネラリスト10万人、エンジニア3万人の育成を目指すとしており、こうした受験者数の増加のほか、協会そのものの会員として多くの企業が加入してくれることも期待しているとコメントしていた。