凸版印刷は9月8日に、トッパンデジタルメディアカンファレンス2017を開催。近年のデジタルマーケティング環境とShufoo!を活用した同社の戦略を紹介した。
まず最初に登壇した、データマーケティングを手がけているインティメート・マージャーの簗島亮次氏は、「多くの人はすでにご存知かもしれませんが、近年はサイト上の特定の場所にバナー広告を掲載するという形式ではなく、閲覧者の属性や興味・関心に合わせた情報を表示するという形式になってきました」とWeb広告の状況の変化を説明する。
純広告のように"枠を買う"タイプの広告から、オーディエンスデータを活用した"ターゲティングする"タイプの広告への移行が進むにつれて、データを使うためのマーケティング基盤であるDMP(データマネジメントプラットフォーム)が重要性を増しているという。
DMPはページ閲覧情報によるメディアデータやアンケートデータ、購買情報によるPOSデータなどを収集・加工できるデータベース。Cookie IDを使って年齢や性別、Webページの回覧キーワード、アクセス元などのデータから顧客属性を導き出し、広告を発信するターゲットを明確化することができる。インターネットで何かを検索した後、別のWebページ上でも広告枠に関連商品が表示されるのは、閲覧データからパーソナライズ化された広告配信が行われているためだ。
DMPを使う意義について簗島氏は「既存顧客以外の見込み顧客にアプローチする場合、データがないと不特定多数に広告を発信しなければならないため非効率なりがちですが、DMPを活用してターゲットを絞って広告を発信すれば、確度の高い人にアプローチできるようになります」と述べる。
多くの人の目に留まればいいのではなく、購買につながる可能性の高い人を中心に広告を見てもらうことで、効率よく効果の高いマーケティングを実行できるというわけだ。
また、DMPは単体だけでなく、ほかのデータと組み合わせることでより効果的な活用が可能だという。例えば、DMPとメディアを使うことで、直近サイトに訪問した非会員に対しても第三者の媒体からのメール送付や広告表示を行うことができる。さらに、DMPと郵便番号を使えば、見込み顧客の割合が多い商圏に対してチラシを配布してアプローチすることも可能だ。
簗島氏は「先にバナー広告を出して認知度を高めたうえでチラシを配布するなど、ターゲットを決めたあとにデジタルとオフラインを組み合わせた複数のチャネルで効率よくアプローチする企業も増えてきました。今後ますますこのような取り組みが活発化していくのではないでしょうか」とマーケティングのマルチチャネル化が加速すると予測する。
このようなデジタルマーケティングの環境の中で、電子チラシサービス「Shufoo!」を提供している凸版印刷 メディア事業推進本部 本部長の山岸祥晃氏は「Shufoo! では10万店舗以上のチラシデータを保有しており、どのような人がどのエリアで、何を買っているのかといったデータを集めることができます。ユーザーにチラシの情報を発信していくだけでなく、購買データに特化したDMPを活用できるメディアとして、ますます進化していきたいと考えています」と述べた。
しかし近年、ネットショッピングが普及し、消費者行動は大きく変化しつつある。Shufoo! がチラシを取り扱っている流通・小売り企業はリアル店舗という顧客接点を武器に、来店を喚起する販促が強く求められている。
来店喚起の販促をするために必要なこととして「ID-POSによる購買データの分析は大事ですが、それだけでは購買後の顧客情報に偏ってしまいます。新規来店誘致のためには、まだ購買していない見込み顧客の情報をいかに獲得するかが重要。そこでDMPによる購買前のデータを活用し、購買後のデータと組み合わせることで、より精度の高い分析が可能になるはずです」と、山岸氏は分析する。
どのような属性の顧客が何を買ったのかといったID-POSのデータだけでは、見込み顧客の新規来店誘致にはつながりづらいのだという。
商圏内に関するDMPを活用すればどのエリアにどのような属性の消費者がいるのかわかるため、見込み客の中でもニーズに合致した顧客に対して有効な情報を訴求することができれば、効率的なアプローチによって来店促進が可能になるというわけだ。
そのうえで山岸氏は「Shufoo! ではアクセスログから個人単位の異なる閲覧傾向を把握することで、商圏データと人のデータを詳細情報を手に入れることができるため、ユーザーと店舗のマッチングを行うことができるようになります。そうすることで、これまでリーチできなかった見込み顧客に対しても、マーケティングを行うことができるようになるでしょう。また、今後はチラシのコンテンツ化として、例えば、自店舗のチラシをよく閲覧する人には品質を訴求する動画を配信する、自店舗のチラシを見ていない人には来店動機になるような特典を訴求するといったソリューションを進めていく予定です」と、同サービスの強みと展望を述べた。
日用品の面倒な買い物は便利なサービスに流されてしまいがちだが、パーソナライズ化されたマーケティングとリアル店舗ならではの取り組みなどによって、買い物に楽しさやお得さといった付加価値を提供することができれば、EC化が進む現代でも実店舗の地位を確立することができるのではないだろうか。