米Oracleが米サンフランシスコで開催中の「Oracle OpenWorld 2017」で、同社CEOのマーク・ハードは自社クラウド事業全体の戦略について説明した。ハード氏は2年前のOpenWorldで2025年の予想を披露したが、今年はその予想が実現しそうであることをアピールした。
ハード氏の「2025年のクラウド予言」は、2015年のOpenWorldで打ち出したものだ。まずはその内容を見てみよう。
- 運用環境にある80%のアプリがクラウドで動くようになる
- SaaS市場は、2、3社のスイートプロバイダーが80%のシェアをとる
- 100%の開発とテスト環境がクラウドで動くようになる
- ほぼすべての企業のデータがクラウドに保存されるようになる
- エンタープライズクラウドは最も安全なITとなる
2016年には、以下の3つが加わった。
- IT予算の80%がクラウドに費やされる
- 企業が所有するデータセンターは80%減る
- IOは80%のIT予算をイノベーションに費やす
Fortune 500の半数が消えた2017年、もはやクラウドは避けられない
クラウドが「避けられない道」であることは、ビジネスを取り巻く環境から明らかだ。
「世界のGDPは2%程度しか成長せず(そのうちの40%が中国からという)、企業はどこも効率化を進めてコストをカットし、新しい方法を探りつつ売り上げをなんとか業界平均並みに伸ばそうとしている」とハード氏。そして、2000年のFortune 500のうち、半分が入れ替わっていることに触れた。「進化のスピードは早く、企業が消えていく速度は加速している。10年後、Fortune 500の半分が入れ替わっていてもおかしくない」
企業の基本姿勢は「売り上げを増やし、シェアを増やす」「支出を減らす」「キャッシュフローを改善する」と、どこも同じだ。
ハード氏はこれに、「リスクを管理する」を加えた。サイバー攻撃にあって顧客情報が漏れたら、ブランドが傷つく。また、ソーシャルサービスにより顧客は大きな発言力を持つようになり、レピュテーションの維持に気を配る必要がある。
「売り上げを増やす、支出を減らすだけでは不十分だ。リスク管理が重要になっている」とハード氏。なお、Oracleは前日、完全に運用管理を自動化する最新のデータベース「Oracle Database 18c」を発表している。自動化により人の介在がなくなるため、パッチ適用などを迅速に行うことができるという特徴を持つ。
このように、クラウドはコスト、スケール、セキュリティなどでメリットをもたらすほか、Oracleが「Adaptive Intelligence」として進めている機械学習などの最新のイノベーションや技術をいち早く活用できるというメリットもある。
ハード氏はさらに、Oracleの差別化のポイントとして、包括性や統合のメリットを挙げた。
Oracleは「Integrated Cloud”」強調しているが、ハード氏はここでシリコンバレーなどのベンチャーが開発する単機能型のクラウドを複数導入した結果、顧客はインテグレーション、そしてアップグレードや変更などのメンテナンス作業に追われ複雑性を増していると指摘。
「Oracleはアプリ、プラットフォーム、インフラを構築し、クラウドにシフトする、あるいはクラウドで始めることを可能にする」「包括的なSaaSアプリケーション、包括的なPaaSサービス、次世代型のIaaSを備える」と、競合との違いを強調した。OracleのIaaS、SaaS、PaaSは統合や連携が容易で、補完しあうという。