CureApp(キュア・アップ)は10月2日、同社が開発したニコチン依存症治療アプリ「CureApp 禁煙」について、治験を開始すると発表した。スマートフォンアプリ(以下、スマホアプリ)を用いた治療の治験を行うのは、同社によればこれが国内初だという。
今回開始される治験は、慶應義塾大学病院、さいたま市立病院を含むおよそ30カ所の医療機関で、2019年3月までの実施を予定。治療9~24週における継続禁煙率を主要評価項目とする。
アプリを使ったデジタル療法の現状
CureAppは、2014年創業のMedTechベンチャー。同社 代表取締役CEOの佐竹晃太氏は慶應義塾大学 医学部出身の呼吸器内科医で、米国で先行しているスマホアプリによる治療成果を見聞したことをきっかけに、治療アプリという医療分野における新領域で起業した。
佐竹氏は米国での事例として、Natureに論文が掲載された糖尿病アプリ「Noom Coach」をはじめ、うつ病、薬物依存症などを挙げた。また、アプリを用いた治療などモバイルヘルス関連の論文数の増加、薬事法(現薬機法)の改正で、国内でスマホアプリのようなソフトウェアそのものが医療機器とみなされるようになったことなども追い風であるとした。
「禁煙」アプリの治験をする目的
では今回、「禁煙」を治療対象とした理由は何だったのだろうか。まず、喫煙が同氏の専門である呼吸器と深く関わるリスクファクターであることが挙げられる。会見に出席した慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 専任講師・診療副部長 福永興壱氏は、喫煙が肺がん、成人喘息、COPDといった疾患の原因になることから、「たばこと呼吸内科は切っても切れない関係がある」と説明した。
また、現状の治療法におけるニコチン依存症の成果が芳しくないことも、禁煙がテーマとなった一因という。禁煙に挑戦者する人は年間600万人存在するが、禁煙外来の受診数は25万人と大きな開きがある。さらに、禁煙外来にかかった人であっても、3か月間の診療機関が終了した後に「復帰」してしまい、禁煙が達成できていないというデータがある。
「現状の禁煙外来では2週間~1か月に1度のペースで診察が行われているが、これだけではニコチンの心理的依存へアプローチすることは難しい。次の診療までの空白期間に治療介入が行われていないことが、禁煙失敗の大きな要因になっている」(佐竹氏)
治験期間は半年、2年後の実用を想定
「CureApp 禁煙」は、この空白期間において患者に働きかけ、行動変容をもたらすことを目的とした治療アプリ。利用者は1日単位での禁煙成果、喫煙への欲求などの情報をアプリに入力し、アプリ側からは、入力情報から判断される必要な情報を提供する。
例えば起床時、寝起きに一服したくなる衝動を抑えるための手立てを案内するなど、患者の生活習慣の一部となっている喫煙を回避するための補助を行う。こうした治療ガイダンスは、クラウド経由でリアルタイムに行われるとしている。
佐竹氏に患者への治療法の提示手段について尋ねたところ、「禁煙外来を受診されるような方々は、禁煙達成への意欲が非常に高い。そのため、能動的な情報取得を妨げず、スムーズに情報にアクセスできるようアプリ設計を行っている。それに加えて、プッシュ通知でも時間帯などに適した治療法を案内する」と語った。治験では、通常の禁煙外来の治療プログラムである問診と投薬に加えて、治療アプリを併用する形式で行われる。
なお、「CureApp 禁煙」は2年後の実用化を想定しているとのこと。なお、正式リリースの際には、アプリの価格は医薬品と同様に健康保険の対象となり、病院の窓口で支払うかたちとなる。