オムロンは10月3日~6日にかけて千葉県・幕張メッセにて開催されるCPS/IoT Exhibition「CEATEC JAPAN 2017」にて、同社の卓球ロボット「フォルフェウス」の最新機種を公開する。10月2日、開催に先駆けて行われた会見では、2016年リオデジャネイロオリンピック卓球シングルス銅メダリストの水谷隼氏が、同機とデモンストレーション対決を行った。

2016年リオデジャネイロオリンピック 卓球シングルス銅メダリストの水谷隼氏と卓球ロボット「フォルフェウス」

「人と機械の融和」を目指すオムロン

「人と機械の関係は変化している」。こう語るのは、同社の代表取締役執行役員専務CTO兼技術・知財本部長の宮田喜一郎氏。同社では、人と機械の関係を3段階で捉えているという。まずは、機械が人の作業を置き換える「代替」。次に、機械と人が作業を分担する「共同」。そして、機械が人の能力や創造性を引き出す「融和」の3段階だ。同氏はさらに、「フォルフェウスは、「人と機械の融和」という、同社の目指す世界を表現するシンボルである」と語った。

オムロンの考える、人と機械の関係。右に寄るにつれて、人の知的活動量が上がっていくことが特徴であるという

人が機械に合わせ、作業を「分担」することとは異なり、人と機械の融和を実現するためには、「ロボットが人の行動に合わせる」必要があるという。これにより、作業効率の最適化や、人の能力や創造性の向上が見込まれるとしており、例えばフォルフェウスだと、「相手に合わせて強さを変える」というシステムが組まれている。これにより、フォルフェウスと卓球の練習をするユーザーは、能力を引き出され、上達へ近づく。

このように、ロボットが「相手に合わせる」ためには、センシング技術が重要となる。そのため同社では、2017年3月には米国モバイルヘルスメーカー「アライブコア」と提携、同年4月には日本の産業カメラメーカー「センテック」を買収、同年8月には米国の産業用コートリーダメーカー「マイクロスキャン」を買収するなど、センシング技術の強化を積極的に続けている。

新たな機能が付いた「フォルフェウス」

4代目フォルフェウスでは新たに、サーブ機能とスマッシュへの対応機能が追加された。同機能を実現したのは、「時系列ディープラーニング」とロボットの「同期制御技術」であるという。まず、フォルフェウスが「人の行動に合わせる」ために、人体センサを用い、対戦者の身体の動きを時系列ディープラーニングで解析することで、スマッシュを打とうとする気配を読み取り、それに合わせた行動をとることができるようになった。

相手の「スマッシュを打とうとする気配」を読みとり、それに合わせた行動をとる

また、2種のロボットの同期制御によって、同社の垂直多関節ロボット「Viper650」によってトスを上げ、フォルフェウスのスイングによってサーブにつなげられるようになった。この間、2機の間では1/100秒以下の精度で同期を行っているという。

垂直多関節ロボット「Viper650」。サーブのトスを行う

「フォルフェウス」vs水谷選手、その結末は……

デモには、卓球選手の水谷選手が参加。同期制御による華麗なサーブを打ったフォルフェウスに対し、慣れた手つきでレシーブする水谷選手。レシーブされたボールに合わせてフォルフェウスがラケットを振り、ラリーが長く続いた。水谷選手がスマッシュを打つと、ラケットを素早く構えてそれに対応していた。しかし、強く打ったスマッシュに対しては、スピードに対応してラケットは構えたものの、しっかりと相手に返すことはできていなかった。

ラリーを行う水谷選手と「フォルフェウス」

ゲームの結果がスクリーンに表示される

デモを終えた水谷選手は、「いつまでもラリーが続けられそうだった」「思っていたよりも深いところにサーブを打ってきた」などと、フォルフェウスの技術に驚いていた様子だった。