帝人は10月2日、ウェアラブルデバイスを内蔵した「スマート消防服」を開発したと発表した。また、スマート消防服を用いた消防隊員の安全警報システムの開発に向けて、共同研究先である大阪市立大学が大阪市消防局と行った実証実験データを分析した結果、深部体温の予測による熱中症リスクの予知に世界で初めて成功したという。

スマート消防服のイメージ

新製品は、同社の消防機能向上への取り組みの一環として開発。同製品には、同社グループでIT事業を展開しているインフォコムと共同開発した、名刺ケースサイズのセンシングデバイスを内蔵している。同デバイスは、温度や位置情報などの通信を可能とし、火災現場や消防本部などの管理システムに消防隊員のデータをリアルタイムで送信する仕組みを持つ。

消防服は、同社が防護衣料向けに展開している、長期耐熱性や難燃性に優れるというメタ系アラミド繊維のコーネックス、高強度パラ系アラミド繊維のテクノーラなどを使用し、センシングデバイスの筐体には、ポリカーボネート樹脂のパンライトを使用している。

センシングデバイスから管理システムに送信した消防隊員のデータは収集・解析した上で、深部体温の予測による熱中症リスク警報の発信など、消防隊員の安全管理に利用する。同社は2019年以降に、スマート消防服による消防隊員の安全警報システムの実用化を目指し、消防活動における多様な実証実験を重ね、深部体温の予測式やアルゴリズムを確立していく。

さらに、消防隊員の安全警報に留まらず、位置情報管理などを含む総合的な消防ソリューションとして、同社グループとして開発を推進する。加えて、高温下での作業などの従事者における労働環境の改善による働き方改革に貢献すべく、今回の実証実験で得た深部体温の予測式やアルゴリズムの利用拡大を図る方針だ。