「DMM.make AKIBA Open Challenge」は、DMM.comによるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)プロダクト開発支援プログラムである。この第2期は、今年3月6日~4月30日に募集したもので、選考の結果、7チームを採択。9月26日、DMM.make AKIBAにて開発の成果を披露する展示会が開催された。

このプログラムは、IoTに関するアイデアやプロトタイプを発掘し、製品化を促進することが目的。そのため、プログラムにはスタートアップを技術面、ビジネス面からサポートできる企業が参加しており、採択されたチームは3カ月間、これらサポーター企業からの支援を受けることができる。

「DMM.make AKIBA Open Challenge」第2期の採択チーム

展示会では、採択チームによるショートプレゼンも行われた

第2期の採択チームは以下の通りだ。ロボットやAIなど、テーマは幅広いが、それぞれ何を開発しているのか、ざっくり紹介してみよう。

テレプレゼンス向けヒューマノイドロボット「teleporter(テレポーター)」

遠隔地での打ち合わせなどを目的としたヒューマノイドロボット。目にカメラが内蔵されており、ロボットだけ遠隔地に送っておけば、利用者はその場にいながらにして、遠隔地に行った感覚を得ることができる。またこのロボットは利用者そっくりに作られているため、遠隔地の人に対しては、利用者がそこに来たような存在感を与えられる。

まだ開発中のため、ノーメイクで頭部もないが、表情は動いていた

このように内部にはサーボモーターがぎっしり。ワイヤーで表情を動かす

ロボットの顔はシリコン製。内部には19個のサーボモーターが搭載され、利用者のHMDと連動して、顔の向きや表情を変えることが可能だ。実際のユーザーからは、本音が出やすい、親近感が得られる、テレビ電話より盛り上がる、など好意的な反応が多かったという。

人間に似せたロボットでは、いわゆる「不気味の谷」が問題としてあげられることが多いが、チーム代表の石井孝佳氏は「不気味の谷は存在しない」と言い切る。「不気味に感じるのは、腕(技術)と資金が足りないだけ。我々も資金は無いが、腕はある」とし、完成度に自信を見せた。

製品化に向けた課題はコストだが、壊れにくく作るよりも、壊れても交換しやすくすることで、数10万円くらいに抑えたいとのこと。販売だけでなく、レンタルも検討中。今後、スマートホステル「&AND HOSTEL」にて実証実験を行う予定だ。

サポーター企業の「&AND HOSTEL」にて実証実験を行う予定

夜間の受付などでの利用が考えられる。外国語での案内も

スマート電動歯ブラシ「歯っぴ~」

毎日行っている歯磨きを効率化するというスマート電動歯ブラシ。先端にカメラを搭載し、その映像をスマートフォンで確認しながら、歯を磨くことができる。紫外線を当てることで、歯垢を可視化。汚れているところを重点的に磨けるので、効率化が実現するというわけだ。

「歯っぴ~」の試作機。ブラシの先端に、カメラが搭載されている

左は実際の映像。右は歯垢を可視化したものだ(赤い部分が歯垢)

チーム代表の小山昭則氏は「現在の歯磨きは人生50年時代にできた設計。人生100年時代に向けた新しい方法を提供したい」と述べる。歯っぴ~では、単に歯を磨くだけでなく、ログを元に歯科受診を促すことも可能。また、稼働状況から高齢者の安否確認に使うこともできる。

現在はまだ試作段階のため、ブラシ側にカメラが搭載されているが、これだと交換用ブラシの価格が高くなってしまうため、本体側に内蔵することを考えているそうだ。価格は1万円以下を目指しており、1年後の発売を予定している。

スマート・パーソナルトレーニング器具「iGym(アイ・ジム)」

搭載した歪みゲージセンサーにより筋力データを取得し、効果的な筋トレを実現する器具。負荷は油圧抵抗を利用しているため、バーベルなどを使う方法より安全性が高く、高齢者でも使いやすいという。特に、高齢者の筋力低下を防ぎ、寝たきり期間を短縮する効果が期待できる。全身用、膝関節用、足関節用の3種類が用意されている。

これは全身用の器具。スクワット以外にも、さまざまな使い方ができる

スマートフォンで筋力を確認できる。数字で見るとやる気も出そうだ

IoT×AIによるヘルスフィットネスプラットフォーム「Trac(トラック)」

センサーなどで身体状況を計測し、AIで解析する。たとえば野球のピッチャーの場合、投球フォームを解析して故障リスクを判断、改善に繋げることができる。国内では野球からサービスを開始し、2017年度中には、オリンピック種目の8割まで拡大する予定とのこと。アスリート向けの「LiveTrac」のほか、臨床医療研究向けの「MedTrac」なども。

AIエンジンを活用し、投球フォームから故障リスクの大小を判断

適用分野はスポーツに限らない。産業や医療などにも展開していく

AIを活用したDIY投資「Smart Trade(スマートトレード)」

株式投資アルゴリズムのプラットフォームサービス。エンジニアは独自のアルゴリズムを開発し、それを販売することが可能だ。一方、投資家は好みのアルゴリズムを購入し、株式投資を行うことができる。現在、ベータ版を提供中で、すでに100以上のアルゴリズムが提供されている。来月中に、正式サービスを開始する見込みだ。

ソフトウェアエンジニアと投資家に対し、サービスを提供する

将来的には、アルゴリズムの自動最適化・自動生成も計画している

VRのセンサーや周辺機器開発向け「HMD専用拡張アタッチメント」

HMDなどに取り付けられるグリップ。HMDは通常、バンドで頭部に固定するが、これだとどうしても手間がかかり、何度も着脱したいときには不便だ。グリップを付ければ片手で持てるようになり、大勢の来場者に体験してもらうイベントなどでは便利だろう。チーム代表の櫻井潤氏は「グリップ文化を普及させたい」と述べ、B2Bを中心に展開していく考え。

グリップがあれば片手でHMDを持てる。オペラグラスを参考にしたという

ブレッドボードにもグリップ。回路ごと持ち運んでテストするときに便利?

木製の3D地図生成サービス「はだちず」

実際の地図データをもとに、木製の3D地図を生成できるサービス。高低差を強調しており、地形を立体的に見ることができる。主なターゲットとしては、学校の地理教材を想定。パズル形式での出力にも対応しており、楽しみながら学習できるだろう。現在は木製だが、紙製の低価格版も可能。来年からサービス提供を開始したいそうだ。

稲城市周辺の3D地図。素材はコルクとMDFが使われている

製作プロセス。手作業が多いため、自動化が今後の課題だという