iPhone 8 Plus 64GB版の製造原価は295ドル - IHS Markit調べ

総合市場動向調査企業である英IHS Markitは9月25日(欧州時間)、発売されたばかりのApple iPhone 8 Plus(64GB NANDフラッシュメモリ搭載モデル)の詳細なBoM(Bill of Materials:部品一覧)分析を行い、使用されている部品材料費総額は288.08ドルとの推定結果を速報版として発表した。この金額は、今までに発売されたすべてのiPhoneの中で最も高価であったという。

この金額はBoMコストのみであり、実際には、これに基本的な製造コスト7.36ドルが追加されることとなり、最終的な製造原価は295.44ドルと推定されるという。これは、iPhone 7 Plusの製造原価と比べて17.78ドル高いものとなる。一方、基本モデルである iPhone 8の部品材料費は247.51ドルと推定され、これはiPhone 7より9.57ドル高い。64GB搭載のiPhone 8の販売価格は699ドルから始まり、発売時のiPhone 7の価格より50ドル高く、iPhone 8 Plusの価格は799ドルから始まり、発売時のiPhone 7 Plusの価格よりも30ドル高いことを製造原価から考えると、妥当ともいえなくはない。

また、部品代がかさんだ理由の最大の要因はNANDの容量増加と新しいワイヤレス給電部品のためであるとIHS Markitのコスト分析担当ディレクターであるAndrew Rassaweiler氏は指摘している。また、IHSでモバイルハンドセットの上級アナリストを務めるGerrit Schneemann氏は、「iPhone 8と8 Plus、そして後日発売されるiPhone XはAppleにとってきわめて重要な商品であり、期待は高まっている。前四半期のAppleのiPhone出荷台数は前年比で横ばいだった一方、SamsungのGalaxy S8はハイエンドの価格帯で成功し、競争環境を作り出している。しかし、iPhone Xが11月に発売されれば、プレミアムプライス層の人気を独り占めするだろう」と市場の動きを予測している。

ちなみに、IHS Markitの調査によると、2017年第3四半期(7～9月期)のトップ3のスマートフォンメーカーはSamsung(市場シェア23%)、Apple(12%)、Huawei(11%)となるという。

新たな心臓部「A11 Bionicチップ」

iPhone 8および8 Plusの主なアップグレードの1つは、TSMCの10nm FinFETプロセスを使用して製造された6コア(2+4コア)、64ビット対応の「A11 Bionicチップ」である。同チップは、前世代のA10プロセッサより約30%高速ながら、半分の電力で効率的に動作することで、バッテリ寿命の延長を実現した。また、そのパフォーマンスは、スマートフォンで拡張現実(AR)体験を促進することも可能としている。IHSでは、同プロセッサの価格を27.50ドルと推定しているほか、搭載されている半導体メモリ(NANDおよびDRAM)総額については31.20ドルと推定している。

このほか、カメラには人工知能(AI)が採用されているが、これはA11チップに搭載されたニューラルネットワークプロセッシングコア「Neural Engine」を活用したもので、iPhone 8 Plusのポートレートモードで数々のコンピュテーショナル・フォトグラフィ(コンピュータを使って高度な画像処理をすることを前提とした写真撮影)を可能にしている。

また、A11には、Appleが独自設計した3つのGPUコアが搭載されており、前世代のグラフィック性能より70%優れたグラフィカル性能を発揮することを可能としている。

さらに、iPhone 8シリーズは、iPhone Xに搭載されるエッジから反対側のエッジまで広がる有機ELディスプレイではなく、従来からの液晶ディスプレイを採用しているが、新たにHDRレンダリングがサポートされ、ビデオコンテンツのダイナミックレンジを広げ、ビデオ品質の向上が図られており、IHSでは、このディスプレイの価格を52.50ドルと推定している。

そして、カメラ向けに新たなイメージセンサも搭載された。レンズには、F1.8とF2.8のアパーチャが搭載されたほか、新しいカラーフィルターも搭載され、これにより背景を完全に黒にすることができるようになった。同カメラはARに利用することが可能で、A11もAR用に最適化が施されている。ゲーマーは、ゲーム内のデジタルオブジェクトからのサウンドオクルージョン(音響閉塞)を伴う空間オーディオを好んでおり、より現実的なバーチャルワールドを作り出すことを可能とした。1080pでのスローモーションビデオキャプチャも240フレーム/秒を実現するなど、機能強化が図られている。IHSでは、iPhone 8 Plusに搭載されている複数のカメラの総額を32.50ドルと推定している。