京都大学(京大)は、良い評価・評判を獲得したいという「賞賛獲得欲求」の高い人ほど友人/知人および他人への利他行動をより多く取っており、悪い評価・評判を避けたいという「拒否回避欲求」の高い人ほど他人への利他行動を取らない傾向が明らかとなったと発表した。

同成果は、同大教育学研究科の楠見孝 教授、河村悠太氏らによるもの。詳細は学術誌「Personality and Individual Differences」掲載された。

評判と利他行動は密接に関連している。これまでの研究で、他の人に見られているような自分の評判が気になる状況で、人はより利他的に振る舞うことが示されていた。しかし、評判への関心の個人差と、利他行動を取る頻度の間に関連があるかについての検討は行われていなかった。

利他行動がたいていの場合良い評判に繋がることを考慮すると、「賞賛獲得欲求」の高い人ほど利他行動を取る頻度が高いと予測されていた。一方、「拒否回避欲求」の高い人の行動は利己的とみなされないよう振る舞うことに動機づけられていると考えると、「拒否回避欲求」と利他行動を取る頻度については、賞賛獲得欲求と利他行動の関連ほど強い関係性は見られないと予測される。

今回の研究では、賞賛獲得欲求と拒否回避欲求の個人差と、利他行動を取る頻度の関連について調べた。調査方法は、20歳から59歳の416人の一般市民を対象とし、利他行動を家族、友人/知人、他人に対する3種類に分類し、賞賛獲得欲求と拒否回避欲求、ならびに対象別に日常の利他行動を取っている頻度を測る質問項目への回答を5段階で求めた。

その結果、「賞賛獲得欲求」の高い人ほど、友人/知人、および他人への利他行動をより多く取っていることが示された一方で、賞賛獲得欲求と拒否回避欲求の両方で、家族への利他行動とは関連していないことが明らかとなった。

これらの結果は、評判への関心と利他行動の関連は、家族よりも友人/知人、他人への利他行動の方が強くなるという研究チームの仮説を支持しており、評判と利他行動の関連を示した従来の知見とも整合している。

しかし、「拒否回避欲求」の高い人ほど他人への利他行動をあまり取っていないことも明らかとなった。これは先行研究とは異なる結果で、他人への利他行動は家族や友人・知人への利他行動に比べて規範的でないと考えると、「拒否回避欲求」の高い人は、否定的に評価される可能性があるために、他人への利他行動をあまり取らない可能性がある。しかし、今回はこの可能性を直接調べたものではないため、今後の検討が必要があると研究グループは説明している。