筑波大学などは9月26日、シート状物質「ホウ化水素シート(ボロファン)」を生成することに成功したと発表した。
同成果は、筑波大学数理物質系 近藤剛弘准教授、東北大学材料科学高等研究所 藤田武志准教授、物質・材料研究機構 Nguyen Thanh Cuong ICYS-Namiki研究員、冨中悟史主任研究員、東京工業大学 細野秀雄教授らの研究グループによるもので、9月19日付の米国科学誌「Journal of American Chemical Society」に掲載された。
ホウ素を含む二次元物質としては、2015年にホウ素のみで構成される二次元物質「ボロフェン」が、単結晶の銀の表面上への真空蒸着で生成できることが報告されていた。一方、ポロファンは、新しい水素吸蔵材料や電子材料としての優れた特性を持つものとして理論的に研究されていたが、予測のみにとどまっていた。
今回、同研究グループは、ボロファンを作成するための母材として二ホウ化マグネシウム(MgB2)に着目。MgB2に含まれるマグネシウムの正イオンを水素の正イオン(プロトン)と交換することにより、室温・大気圧下という温和な条件で、水素とホウ素のみで構成される新しい二次元物質が生成することを明らかにした。同物質は負に帯電したホウ素の二次元シート骨格とプロトンにより構成され、水素とホウ素の組成比は1:1であることがわかっている。
同物質はプロトンを保持しており、200℃~1200℃の幅広い温度範囲で水素分子を放出するため、理論予測されていた電子材料や水素吸蔵材料以外にも、固体燃料や固体酸触媒としての応用が期待できるという。