横浜市立大学は、血圧が昼夜で変動する新たな仕組みを明らかにしたと発表した。
同研究は、横浜市立大学 学術院医学群 薬理学 五嶋良郎 教授らの研究グループと、同大学循環器・腎臓・高血圧内科学、循環制御医学教室の共同研究によるもので、同研究成果は、米国東部時間9月21日付で米国科学誌「JCI Insight」にオンライン掲載された。
血圧は、心臓と血管の働きを通じ、交感神経や副交感神経と呼ばれる自律神経系によってコントロールされることが知られており、血圧制御異常に対しては、病態に応じて様々な治療が行われているが、依然として難治の高血圧症が存在している。その中で、同研究グループは、神経伝達物質ドパミンの前駆体として位置づけられているアミノ酸ドーパが、神経伝達物質ないし修飾物質として働くことや、ドーパ受容体GPR143が、脳幹部孤束核において降圧薬や除脈性応答を仲介することを過去に示している。
同研究チームが、心血管機能におけるGPR143の役割を解明するため、フェニレフリンによる昇圧応答をドーパ受容体GPR143の遺伝子欠損(GPR143-KO)マウスを用いて検討すると、昇圧応答が著減していることが発見された。検証の結果、血圧を上昇させる血管収縮物質ノルアドレナリンに対する血管の反応性が、ノルアドレナリンの原料ドーパによってコントロールされていることが明らかとなった。
また、野生型の活動・睡眠時血中ドーパ濃度は、活動期の夜間で高く、睡眠期で低値を示し、夜間に血圧上昇・心拍数が増大するが、GPR143-KOマウスでは野生型に比べ減弱していた。つまり、ドーパの作用がなくなると、マウスは昼と夜の適切な血圧のコントロールができず、いわゆる「朝に弱い」(マウスは夜行性なので、実際には「夜に弱い」)状態に陥ることが明らかになった。これらの知見は、GPR143が、血管における交感神経応答の制御を介して、血圧の日内変動に関与することを示している。
同研究により、ドーパが神経修飾物質として作動することと、ドーパとドーパ受容体GPR143が、交感神経系を介して血圧をコントロールするという新しい血圧調節のメカニズムが明らかになった。現在、ドーパ及びドーパ受容体を標的にした治療薬は無く、今後、同研究成果を活用した新しい創薬と治療法の確立が期待されるということだ。