東京大学(東大)は9月22日、数十秒から数分の処理でカラーの化学コントラスト像が得られる原子間力顕微法を開発したと発表した。

カラーAFMの原理説明図(出所:東京大学Webサイト)

同成果は、東京大学生産技術研究所マイクロナノ学際研究センター(CIRMM)ならびにLIMMS/CNRS-IIS国際連携研究センターの川勝英樹 教授ならびに日仏の研究者らによるもの。詳細は日本科学誌「Applied Physics Letters」掲載された。

原子間力顕微鏡(AFM)は、鋭利な探針で試料の表面をなぞる装置で、従来から原子の並び方や分子の内部を高い分解能で画像化できていた。しかし、表面の化学情報を精密に計測する場合、1点1点計測し、その結果を統合して数値処理するため、100nm角の範囲を撮像するために数十時間かかる場合もあった。このことから、化学コントラストを調べる顕微鏡としては汎用化されていなかった。

今回の研究では、探針を支える振動子を原子1個程度以下の幅で1秒間に数100万回振動させ、表面の原子間力の変化を検出した。また、1秒間に数千回の頻度で試料を近づけたり遠ざけたりして、1個の原子がどの程度遠くまで影響を及ぼすかを瞬時に計測することを可能とした。

同手法により、原子に関する3つの独立した物理量を同時に計測できるため、それらの値を、赤、緑、青に変換し、カラー画像化した。3つの物理量が同じであれば原子は同じ色で表され、1つでも物理量が異なると別の色で表示される。

今回の成果を受けて研究グループは、今後の展開について、合金、半導体、化合物などの固体試料を、比較的短時間で観察することが可能となり、表面やデバイスの研究や開発に広く活用されることが期待される。また、常に特定の分子を探針の先端に固定して試料を観察することで、さらに普遍性の高い撮像手法への進化が期待されるとコメントしている。