東京大学(東大)と千葉大学は9月25日、スーパーコンピュータ「京」を使った超大規模数値実験により、超新星爆発などによって発生する強い天体衝撃波の3次元構造を明らかにしたと発表した。

同成果は、千葉大学大学院理学研究院ハドロン宇宙国際研究センターの松本洋介 特任准教授、東京大学大学院理学系研究科の天野孝伸 准教授、星野真弘 教授、国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの加藤恒彦 専門研究職員の研究グループらによるもの。詳細は米国の学術誌「Physical Review Letters」掲載された。

宇宙には高エネルギーの荷電粒子が飛び交っており、これを宇宙線と呼ぶ。この発見から100年以上たった現在においても、どのような物理メカニズムで冷たいプラズマ中の荷電粒子が10桁以上も高いエネルギーを持つ宇宙線へと変貌するかを理解することが課題であった。

今回の研究では、スーパーコンピュータ「京」を用いてプラズマの第1原理計算を行い 、膨大なデータを解析することにより、冷たいプラズマが相対論的なエネルギー(ほぼ光速で運動するエネルギー)まで加速する様子を示すことに成功した。

計算から得られた衝撃波付近の3次元構造。カラーは磁場の強さ。実線は磁力線 (c)千葉大学/松本洋介

冷たい電子は衝撃波と相互作用する過程の中で、まず初めに、コヒーレントな電場の波と共鳴する共鳴型加速をし、次に、 強い乱流磁場に散乱されながら加速する統計的加速の2段階を経ることが判明。前者は波に捕捉されながら加速される様子からサーフィン加速と呼ばれ、後者は衝撃波面を横滑りしながら加速するドリフト加速と呼ばれる。

衝撃波面近傍で卓越する強い乱流磁場によってドリフト運動中の電子は散乱され、多くの粒子が下流へ流される間も上流側に留まり、加速し続ける粒子が存在することが明らかになった。この強い乱流磁場による散乱を通して高エネルギー粒子を衝撃波面近傍の加速領域に長時間閉じ込め、加速し続けることが可能であることから、冷たいプラズマと宇宙線粒子をつなげる有望な加速メカニズムとして期待されるという。

今回の成果を受けて研究グループは、冷たいプラズマから宇宙線に変貌する粒子の割合はどれくらいかなどの加速効率の問題が残されているが、それらを明らかにするためには、今回と同様の大規模な実験を複数回繰り返す必要がある。解析するデータがペタバイトクラスとなるため粘り強く研究に取り組まなければならないが、その先には宇宙線の起源を明らかにすることが期待されるとコメントしている。