慶應義塾大学は、同大理工学部システムデザイン工学科の野崎貴裕助教が、同大先導研究センター・ハプティクス研究センターおよびシブヤ精機と共同して、軟弱果実の取り扱いが可能なロボットハンドシステムの開発に成功したことを発表した。

システムの構成図（出所:慶應義塾大学ニュースリリース）

少子高齢化などにともない、農作業や生産設備の省人化・自動化が希求されている。果実のハンドリングには従来、吸着方式や吸引方式が試行されてきたが、極度に腐敗が進行した軟弱なみかんなどをロボットハンドで持ち上げると、果皮が剥がれたり搬送時に果実が落下したりする問題が生じていた。特に腐敗した果実が選果機上に流れてしまうと、 青果への腐敗果混入リスクだけでなく、機械設備の汚染や青果への腐敗菌付着、選果効率・処理能力の低減などが課題となっていた。

ロボットハンド部（出所:慶應義塾大学ニュースリリース）

このたび開発されたシステムは、腐敗した柑橘を除去することを目的とした選果ロボット。紫外照明と白色照明とを合わせた独自のマシンビジョンにより、果実の大きさ・位置・腐敗度・傷の度合いを測定するとともに、リアルハプティクス技術を搭載したロボットハンドによって柔軟で確実な把持を実現する。

これにより、極度に腐敗が進行した軟弱な果実であっても非破壊かつ正確、迅速に果実を取り扱うことが可能となり、衛生的な選果ラインの維持と、選果作業の省人化ならびに処理能力の向上がもたらされる。農産物のような軟弱かつ不定型な対象物のハンドリングに、リアルハプティクス技術を応用することで、ソフトにつかむことができるロボットが実現した。

研究グループは、柑橘の腐敗果を除去するだけでなく、イチゴや桃・トマトなどの選果・選別から箱詰めまで、一連の作業を自動化・省人化するロボットシステムや、お弁当や総菜の製造ラインへの適応など幅広い応 用展開を見据えて研究開発を実施しているという。さらに今後は、農産物の収穫や調整といった、より複雑でソフトな取り扱いが必要な作業への展開も検討中だとしている。

腐敗果実排出の様子

なお、同システムは、10月3日～6日に幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2017」、10月11日～13日に幕張メッセで開催される「JAPAN PACK 2017(2017 日本国際包装機械展)」、10月3日～6日に東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催される「農業ワールド2017」に出展予定となっている。