世界的に貴重な文化財を現代の技術で精密に復元して展示する企画展「素心伝心 クローン文化財 失われた刻(とき)の再生」(東京芸術大学など主催)が10月26日まで、東京都台東区の東京芸術大学大学美術館で開かれている。日本、アフガニスタン、中国など6か国の7文化財が復元、展示されている。
クローンとは、生き物の体の一部から作った、元とそっくりな生き物のことだ。東京芸大は、時代とともに劣化が進む像や壁画などの文化財を実物そっくりに復元する新たな技術を開発し、その複製を、生き物のクローンになぞらえて「クローン文化財」と名づけた。
法隆寺・釈迦(しゃか)三尊像のクローンは、その形を光で3次元計測することから始めた。そのデータをもとに作った型で鋳造し、実物の色合いが出るようにメッキをほどこした。アフガニスタン・バーミヤン東大仏が2001年に破壊された際に失われた、頭上の天井壁画も再現されている。天井の形を計測したデータに、かつて撮影してあったカラー写真を組み合わせ、特徴的な「青」の色は、この地域の鉱石「ラピスラズリ」を砕いて復元した。
主催者代表の宮廻正明(みやさこ まさあき)同大大学院教授は、9月22日の開会式で、「これまで文化財はただひとつのものだったが、クローン文化財によって、その文化を多くの人と共有し、次の世代に伝えることもできるようになった」と、この新たな試みの意義を強調した。
10月9日を除く月曜日は休館。入場料は一般1000円、大学・高校生800円、中学生以下は無料。
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