シスコシステムズは9月21日、都内で同社のIoT戦略に関する記者説明会を開催した。IoTの活用が進む昨今、企業は取得したデータから価値を得ることに頭を悩ませている。そこで今回、同社はデータの価値を引き出すためのソリューションなどについて説明し、年内にも国内でIoT Data Fabric「Cisco Kinetic」をリリースすると発表した。
最初に、米Cisco Systems バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー IoTクラウド事業担当のジャハンギール・モハメッド氏は、データから価値を見出すことを達成するために、顧客は4つの課題に直面していると指摘した。
「IoTにより、センサーやストレージ、マイクロプロセッサ、ソフトウェアコントロールなどの機器のコストが下がっており、顧客のデータ量が爆発的に増加している。データから事業の価値を引き出すことが可能になり、データを活用したいと考える企業も多くなっている。データを価値に変換するには、データを取得した上でアプリケーションに移さなければならない。しかし実際の環境では、さまざまなモノやアプリケーションが分散しているため、それほど単純なことではない」
同氏がいう4つの課題とは「デバイスの多様化による接続・セキュリティ・運用管理の複雑化」「多くのデータがモノの中に閉じ込められたままになっていること」「適切なデータを適切なタイミングで適切なアプリケーションに移動させるプログラム化された手段が存在しないこと」「データのプライバシー・セキュリティ・オーナーシップを管理して徹底できるソフトウェアがないこと」だ。
IoT Network FabricとIoT Data Fabricで、顧客の課題解決を支援
同社はこれらの課題解決に向けて、IoT Network FabricとIoT Data Fabricの2つの側面から支援する。IoT Network Fabricは、すべてのアプリケーションを接続し、モノがどこにあってもセキュアなネットワークを介してつなぐ根本的なものとなり、これを実現するために「Cisco Intent-Based Network」を開発し、SIMを管理する「Cisco Jasper」と組み合わせている。
IoT Network Fabricにより、デバイスをネットワークに素早く安全に接続するとともに、ネットワーク・トラフィックを分離するほか、デバイスをリアルタイムで可視化することで接続を個別に制御する。産業環境ニーズに対応したさまざまなネットワーク機器をラインアップしているため、多様な環境に対応しており、ストレージや処理機能をネットワークに組み込んだパーペイシブコンピュティングを備える。そして、EthernetやWi-Fi、LoRaなど多様なアクセス方法をサポートする。
しかし、IoT Network Fabricだけではデバイスの多様化による接続、セキュリティ、運用管理の複雑化のみしか解消できないという。そこで、IoT Data Fabricが残る3つの課題に対応する。IoT Data Fabricは、同社が構築したIoT Data Fabric「Cisco Kinect」がカギとなる。これはIoT Network Fabric上にロジカルオーバーレイで重なっており、ソフトウェアがデータ取得・処理・移動することを可能とし、プライバシーやセキュリティ、オーナーシップを担保することができる。
また、分散型ソフトウェアであり、ゲートウェイで実行し、シームレスなシステムとして拡張できる。使用例としては、「システムを自動的にプロビジョニング」「セキュアにデータを取得して正規化」「データ解析・ルール実行」「システム全体でルール実行(ビジネスロジック、運用ロジック)」「データの可視化」「適切なアプリに適切なデータをセキュアに移動」といったプロセスをがある。
モハメッド氏は「IoT Network FabricとIoT Data Fabricを組み合わせることで、4つの課題を解決することができる。これは、われわれ独自の強みだ。データAPIにより、さまざまなアプリケーションの利用を実現し、パブリッククラウド、プライベートクラウド、データセンターなど環境を選ばないため、柔軟性を有している。フォーカスする分野はスマートシティ、製造業、石油/ガス、交通、小売となる」と語った。
スターターソリューションを発表
産業分野別のスターターソリューションについては、米Cisco System ゼネラルマネージャー インダストリープロダクトグループのブライアン・タンゼン氏が説明した。
同氏は「スターターソリューションは、われわれの製品やサードパーティのハードウェア、ソフトウェア、サービスを1つにパッケージ化しており、IoT導入に伴う複雑性を解消していく。企業が価値を得るために必要なすべてのものを提供する」と、説く。
まずは、日本市場向けにKineticと同社製品やサードパーティーのソリューションをバンドルした形で「屋外照明」「パーキング」「アーバンモビリティ」「環境(大気)」「安心&安全(防犯)」のスマートシティ向けと、「エネルギー管理」「機器の健全性監視」の製造業向けの7つを提供するという。
日本におけるIoTの展開
日本での取り組みに関して、シスコシステムズ 執行役員 CTO 兼 最高セキュリティ責任者の濱田義之氏は「日本では製造業とスマートシティにフォーカスする。現状では製造業はファナック、ヤマザキマザック、横河ソリューションサービス、牧野フライス、オークマ、スマートシティでは京都府と連携している」と述べた。
一例として、京都府木津川市の事例を挙げ、スマートライティング(屋外街灯)、公園の管理などにビデオサーベイランスマネージャー、街灯などすべてのセンサ情報を一括管理するコネクテッドデジタルプラットフォームが同市では稼働しており、2018年には通行状況分析システムを導入する予定だという。