富士通研究所は9月19日、医療現場での診察・看護など両手が塞がりやすい業務に適したウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を世界で初めて開発したと発表した。
これによると、近年の訪日外国人の増加に伴い、病院を訪れる外国人患者が増加し、多言語による会話の支援が課題となっているという。
一方の富士通研究所は、2016年に人の音声や話者の位置を認識し、端末に触れずに自動で適切な言語に切り替えるハンズフリー技術を開発。同年、東京大学医学部附属病院(以下、東大病院)と情報通信研究機構(以下、NICT)と共に、医療分野で据え置き型のタブレットを使った多言語音声翻訳の実証実験を行ったところ、病棟での看護など医療者の両手が塞がる場合が多いため、端末に触れることなく、身に付けて利用できる音声翻訳端末への期待が大きいことが分かった。
これを受け同社は、多言語音声翻訳の適用領域を広げるために、音道形状の工夫により小型無指向性マイクを用いる話者識別技術の開発と、雑音に強い発話検出技術の精度を向上し、小型でウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末を世界で初めて開発するに至った。
今回開発した技術により、大病院の検査室相当の環境(60デシベルの雑音)で、医療者と患者が対面で会話する際に自然な距離80cmにおいて、発話の検出精度95%を達成。同音声翻訳端末を用いることにより、病棟での看護など両手が塞がりやすい業務において、端末に触れることなく、音声翻訳を利用することが可能となり、医療者の負担軽減が期待できる。
同社は、今回開発したウェアラブル型のハンズフリー音声翻訳端末と、NICTが開発した医療現場における日本語・英語・中国語の高精度な翻訳に対応した音声翻訳システムを用いて、東大病院を含む全国の医療機関で2017年11月から臨床試験を実施する。また、臨床試験の結果を踏まえ、対応言語と利用場所を拡大していく予定だ。
加えて、今後、同技術を適用した音声翻訳システムを観光での接客や自治体の窓口業務などさまざまな分野への展開を検討し、2018年度中の実用化を目指す。