ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズとオリンパスは9月19日、医療事業の合弁会社ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ(ソメド)が4K 3Dビデオ技術を搭載することで、高精細かつ立体的なデジタル画像により手術をサポートする手術用顕微鏡システムを開発し、オリンパスより製品化。「ORBEYE(オーブアイ)」というブランド名で、日本と米国にて10月上旬より順次発売を開始する予定であることを発表した。
ソメドは、ソニーならびにオリンパス単独ではなしえない製品開発を、外科に集中した形で行うことを目的に2014年に設立された合弁会社。すでに2015年に4Kに対応した外科手術用内視鏡システムを発表しており、以降、4K技術を核にした製品の開発を続けてきたという。
今回開発された手術用顕微鏡システムは、従来の手術で用いられる光学式顕微鏡システムを置き換えることを目的に開発されたもの。その開発コンセプトについてソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ 代表取締役副社長の勝本徹氏は、「より鮮明な視界の提供」「術野の共有」「簡単なセットアップ」の3つを挙げる。
こうした3つのコンセプトに至った背景として勝本氏は、「外科手術の現状は、執刀医が顕微鏡を覗き込んで、長時間作業を行う必要があり、顕微鏡を覗き込んでいる執刀医以外はほとんど手術の進捗をじかに見て理解できない、また、光学式顕微鏡は大型で、特定の手術室に据え置いておく必要がある」といった課題があり、それをデジタル化により解決することを目指したものだとし、「これまでの光学式顕微鏡に対して、別次元のユーザビリティを実現している」と自信を述べた。
具体的にシステムの構成は、顕微鏡システム、31型/55型の4K 3Dモニタ、4K 3Dレコーダーとなっており、顕微鏡システムには、ソニーの4K対応裏面照射型Exmor R CMOSイメージセンサを2個搭載したほか、高速信号処理アルゴリズムの採用により、遅延のない3D映像表示を可能とし、奥行き感についても既存の光学式顕微鏡と遜色のない性能を実現したとする。
また、色づくりにも注力しており、従来の外科内視鏡システムHD製品の倍となる16軸色調整と、4Kシステムによる高色域を組み合わせたうえで、医師の知見などを取り入れ、よりリアルな色見を実現したという。
さらに小型化に向けて、一眼レフカメラなどでも用いられている非球面ガラスモールドとED(特殊低分散)レンズを採用したほか、光学設計も従来の300mm超の長さから150mm程度へと半減。これにより顕微鏡部は、従来の光学式と比べ体積比で95%減としたほか、それを支えるアームも光伝送技術の採用などにより細径化、インナーケーブル化を実現。サイズも同75%減を実現し、重量も同約50%減の軽量化を果たしたとする。
加えて、6軸の移動軸を採用することで、患部への容易なアプローチを可能とし、さまざまな方向からの術部の観察を可能とした。
ちなみにORBEYEという名称についてオリンパス取締役専務執行役員の田口晶弘氏は、「軌跡や地球、頭部といった意味のORBと、それを観察する眼であるEYEを組み合わせた造語」としており、地球上にある手術用顕微鏡すべての置き換えを目指すという想いを込めて名づけたとする。
なお、今後は日米の脳神経外科医を中心に、耳鼻科や眼科などもターゲットとして提供していき、発売5年間で脳神経外科分野でのシェア20%を目指すとしている。