理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター(CEMS)創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎研究員、染谷隆夫チームリーダーらの共同研究グループは、洗濯も可能な伸縮性と耐水性を持つ、超薄型有機太陽電池の開発に成功したことを発表した。この成果は、英国の科学雑誌「Nature Energy」に9月18日付(日本時間9月19日)で掲載された。

衣服上に貼り付けた超薄型有機太陽電池の洗濯写真(出所:理研Webサイト)

衣服に貼り付けられる太陽電池は、生体継続モニタリングに向けたウェアラブルセンサーなどを駆動するための電源として重要な役割を果たす。このような太陽電池の実現には、高い環境安定性、高いエネルギー変換効率、機械的柔軟性という3つの要素を同時に満たす必要があるが、従来の有機太陽電池ではこれらを同時に満たすことは困難であった。

このたび共同研究チームは、超柔軟で極薄の有機太陽電池を作製し、大気中・水中の保管でも劣化なく動作させることに成功した。この超柔軟な有機太陽電池は、厚さわずか1マイクロメートル(1μm、1,000分の1mm)の基板フィルムと封止膜を採用し、曲げたりつぶしたりしても動作する。

このように超薄型でありながら、高いエネルギー変換効率と同時に高い耐水性を両立させることに成功した。開発の決め手となったのは、高い環境安定性と高いエネルギー変換効率を両立した有機半導体ポリマーを極薄の高分子基板上に形成する技術である。さらに、超薄型有機太陽電池をあらかじめ引張させたゴムによって双方向から挟むことで、伸縮性を保持しながら耐水性が劇的に向上する封止を実現した。120分間の水中浸漬でもエネルギー変換効率の低下は5%程度であり、また水滴をデバイス上へ滴下・一定時間保持しつつ約50%の伸縮を繰り返し行った際にも、エネルギー変換効率は初期の80%を保っている。

ゴムサンドイッチ構造による高い耐水性を持つ伸縮性有機太陽電池(出所:理研Webサイト)

なお、今回開発された洗濯できる超薄型有機太陽電池は、ウェアラブルデバイスやe-テキスタイルに向けた長期安定電源応用の未来に大きく貢献すると期待できると説明している。