ダイセルは、セルロース系材料の強みである透水性を保持しながら、耐薬品性を大幅に向上させた水処理膜用新材料を開発し、グループ企業のダイセン・メンブレン・システムズ(以下、ダイセン)とともに、軽量化した外圧式中空糸膜モジュールの開発を進めていると発表した。
同材料は、従来品に比べ、耐塩素で約10倍、耐アルカリ性で約1千倍という性能を実現した水処理膜用新材料。一般的にセルロース系材料の膜は親水性で、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PES(ポリエーテルスルホン)などの膜に比べ、透水性に優れ汚れにくいという利点がある一方で、耐薬品性に課題があった。 一方、ダイセルは、たばこフィルターや液晶用フィルムの原料である酢酸セルロースを長年量産するとともに、有機合成技術を駆使して多くのセルロース誘導体を開発してきた歴史があり、これらのコア技術を使って、新しい膜材料の開発に取り組んできた。新材料は、PES膜並みの耐薬品性を獲得しており、また、従来品でもPES膜の1.5倍以上という高い透水性能を新材料でも保持している。用途としては、UF膜(限外ろ過膜、孔径0.001~0.01μm)、MF膜(精密ろ過膜、孔径0.01~10μm)を対象としているということだ。
ダイセルはダイセンとともに、このたび開発された新材料を活用し、高い透水性能を活かして中空糸の本数を減らすことにより軽量化できる外圧式中空糸膜モジュールの開発を進めており、2018年初めのプロトタイプ提供開始を目標にしている。同モジュールは、中空糸膜材料の耐薬品性も向上していることから、下水、工業排水、海水淡水化の前処理など幅広い分野での使用が可能になるという。また、新モジュールは、セルロース膜の特徴である親水性を保持しているため、洗浄頻度の低下や薬剤使用量の削減など、メンテナンスに伴って生ずるコストの低減に寄与するということだ。