新材料の発見がもたらす社会への影響は大きい。例えば、炭素繊維強化プラスチックにより航空機は大幅な軽量化を果たし、製造コストおよび燃料コストの削減を実現した。産業の基盤となる、材料を開発する意義は大きく、その研究は日々進められている。その材料開発が今、パラダイムシフトを迎えている。最先端の研究ではなにが起きているのか。

ダッソー・システムズ・バイオビアの桑原理一氏

ダッソー・システムズ・バイオビア(BIOVIA)の桑原理一氏は、9月に開催された同社のセミナーにて、「最先端の材料開発へのBIOVIA製品の応用」と題し、材料開発分野で近年注目を集めている「マテリアルズ・インフォマティクス」(MI)の説明および、同社の提供する、データの処理・解析・レポート作業を自動化するためのサービスを構築する「Pipeline Pilot」を用いた応用法の説明を行った。

マテリアルズ・インフォマティクスとは、情報科学と計算科学の手法を組み合わせて新しい機能(物性)を持つ材料を発見しようという試みのこと。これは、バイオインフォマティクスやケモインフォマティクスと同種の概念である。つまり、これまで、材料開発にあたって、材料から物性値を計測していたところを、あらかじめ設定した物性値に合った材料を開発する、という逆方向の考え方だ。従来の材料開発と異なり、材料の物性データを基にすることから、データ駆動型の材料開発などとも呼ばれる。

この材料開発法の例として、第一原理計算を用いる方法がある。周期表から、元素を選択して、それに対してシミュレーションを行い、得られたデータと既知のデータを組み合わせ、機械学習を用いることで新規材料を発見するものだ。同氏は、今後このような手法を用いることにより、新材料の開発が進展していくと説明。研究事例の紹介を行ったほか、同社の提供する製品を用いた応用事例などを披露した。

マテリアルズ・インフォマティクスにおけるワークフローの例 (この画像は配布資料をコピーしたものを使用)

現在同社では、Pipeline Pilotのほかにも、材料の物性や挙動について原子・分子構造がどのように関係しているかをモデリング/シミュレーションできる「BIOVIA Materials Studio」などといったソリューションも提供しており、今後も同分野へのアプローチを強化していくとしている。