名古屋大学(名大)は、NASAの科学衛星「THEMIS」の観測データから、周波数1Hz程度の電波が、宇宙のプラズマの中から発生する瞬間の観測に成功したと発表した。

地球周囲の宇宙空間であるジオスペースにおける自然電波発生の様子(出所:名大Webサイト)

同成果は、名古屋大学宇宙地球環境研究所の小路真史 特任助教、三好由純 准教授、東北大学大学院理学研究科の加藤雄人 准教授、東京大学大学院理学系研究科の桂華邦裕 助教、笠原 慧准 教授、京都大学生存圏研究所の中村紗都子 研究員、大村善治 教授らの研究グループによるもの。詳細は米国の学術誌「Geophysical Research Letters」掲載された。

地球周囲の宇宙空間であるジオスペースのプラズマからは、さまざまな電波が発生しており、プラズマの分布やエネルギーを変えてしまうことが知られている。特に周波数1Hz程度の「電磁イオンサイクロトロン波動」と呼ばれる電波は、放射線の分布を変えたり、オーロラの発生に寄与したりすると考えられている。しかし、これまで、プラズマの中から電波が発生する瞬間は観測では捉えられていなかった。

今回、研究グループは、電波とプラズマの位相関係からプラズマ分布の揺らぎを特定し、相互のエネルギー授受を求める解析手法を開発した。その後、同手法を用いて、NASAの科学衛星「THEMIS」のデータを分析した結果、「電磁イオンサイクロトロン波動」の発生する瞬間を特定し、電波が発生しているときには、その場所に存在するイオン群の中に、数秒間だけ存在する左右非対称な穴が作り出されることを発見したという。また、この穴の存在によって、イオン群のエネルギーが電波を生み出していることを実証したとしている。

なお、研究グループは同成果によって、今後、宇宙プラズマの中で発生しているさまざまな種類の電波の分析に応用されていくことが考えられるとしている。特に、JAXAの科学衛星「あらせ」の観測データに適用することによって、明滅するオーロラを作り出している起源といわれる、周波数数千ヘルツの電波「ホイッスラー波動・コーラス」が生まれる様子が解明されることが期待されるとした。